社会人向け大学院として3研究科を擁する社会構想大学院大学。このうち実務教育研究科は、各種産業や看護、教育など実践的な分野の人材育成リーダーを養成するユニークな研究科だ。学生は社会学、経営学、教育学を通じて、職業人の実務で蓄積してきた個人の暗黙知を、組織内外で伝授できる形式知に転換すべく挑戦している。(編集委員・山本佳世子)

企業や公的機関などの実務活動で得られた実践知を、伝統的な学術知と合わせて新たな知の体系を構築。広く後進に伝えることで、個人の知識を社会の財産に昇華させる―。“実務教育”という他大学にはない名称の同研究科は、こんなミッションを掲げている。「個人の実務経験・知識を形にし、他者との共有に向けて教えられるように変えていく」と川山竜二研究科長はポイントを説明する。

学生は人材コンサルタントや学校法人経営者、校長・教頭、大学教員志望者、看護師管理職などさまざまだ。タレントを育てる芸能事務所プロデューサーは「社員研修のやり方が180度変わった」と振り返る。オンラインと対面のハイフレックス型で、北海道から沖縄まで20―70代。実務の専門を問わないだけに相互の刺激も大きい。

研究科の今春の修了生は2期生に当たるが、同大はこれに先立ち文部科学省事業で「実務家教員養成課程」を動かしてきた。学術より実践に重きを置く専門職大学などで、「実務家教員」の配置が増えているためだ。ここではシラバス(授業計画)や応募時の個人調書作成などを伝授するが「指導力向上の必要性を感じて研究科に進むケースもある」(川山研究科長)という。

このため1学年定員30人の修了後は、「所属組織内のキャリアップ」「大学の実務家教員へ転職」「他大学博士課程への進学」と3分の1ずつだ。「グローバル人材キャリア」「人権学習」「学びの場とイノベーション」などをテーマとする論文を強みに、キャリアの歩みを進めている。