今、株価も不動産価格も平成バブル時代の水準に迫っている。大都市圏のみならず、一部地方ではすでに”バブル超え”を果たしている土地も。このお祭り騒ぎに乗らずしてどうする? 好況に沸く現場を訪れて、その乗り方を探った。
◆「ニセコ・千歳」ヴィトン×スキー場で億超え物件乱立!

「牛丼2000円」

雪をかぶった看板には、ギョッとするような価格のメニューが並んでいた。

「でも、価格を気にして食べる観光客はいませんよ(笑)」

そう話すのは、近くでラーメン店を経営する店主。世界屈指のパウダースノーと温泉で知られる北海道・ニセコは、想像以上のインバウンドバブルに沸いていた。

香港資本の「ニセコHANAZONOリゾート」に入るやいなや、ルイ・ヴィトンの期間限定ストアがお出迎え。ゲレンデで運行されるゴンドラの外装はヴィトン仕様で、内装はフェラーリを手がける伊ピニンファリーナ社がデザインしたという。利用するスキーヤーの95%は外国人。

食堂も外国人で溢れ返り、一杯2400円のカツカレーが飛ぶように売れていた。

「このへんの飲食店の賃料は、今や安くて数十万円。千歳から移動に2時間ほどかかる土地柄ゆえの高額な仕入れコストを総合すると、まっとうな価格」(前出のラーメン店主)

◆「ニセコのリゾートバイトは、時給2000円以上の求人が当たり前」

高額なのは料理だけではない。地元住民が話す。

「ニセコのリゾートバイトは、時給2000円以上の求人が当たり前。年々増加する外国人観光客に対して、地元の人手がまったく足りてないので、人件費が上がり続けている」

地元・倶知安町の不動産会社によると、「一棟3億〜5億円のコンドミニアムも、オーストラリア人や中国人を中心に飛ぶように売れる」という。

実は、同様のバブルは、千歳市でも起こりつつある。国内半導体メーカー・ラピダスの新工場建設を受けて、地価が高騰しているのだ。

「バブルが来ると誰もが認識しているため、多くの地主が土地を手放そうとしない。圧倒的な土地不足で地価が上がり続けている」(同)

ニセコ&千歳バブルのピークはまだまだ先か!?

◆村丸ごとホテル化で外国人富裕層が殺到!?

〈700人の村がひとつのホテルに〉

そんなコンセプトを打ち出した小さな村が外国人観光客から人気を博している。山梨県小菅村だ。村内の「NIPPONIA 小菅 源流の村」は、築150年超の地元名士の邸宅などを改修した分散型古民家ホテル。1泊一人3万〜4万円という宿泊料だが、マネジャーの谷口峻哉さんは「コロナ後のインバウンド復活で、客数は以前の4倍に増えている」と話す。

「最も多いのは香港とオーストラリアのお客さんで、何度も来日して東京や京都など代表的な観光名所は飽きたので、『日本のオーセンティックな体験がしたい』と足を運んでくれています。日本の村に泊まって、地のものを味わうことに価値があると。2泊で50万円使った日本酒好きのフランス人のお客さんもいました」

◆数万円分のお土産や高級ラーメンも飛ぶように売れる

そうした宿泊客がSNSなどに写真や口コミを投稿するため、引きも切らない状況が続いている。バブリーな宿泊客は少々マニアックな土産物も爆買いしていくという。

「小菅村の大工さんがケヤキで作った貯金箱を買い占める中国人がいて、『日本っぽくて縁起がいい』と。あとは地酒、高級品のイメージがあるシャインマスカットを使ったお菓子など、数万円分のお土産を段ボール箱に詰め込んで帰る人もいました」(物産館のスタッフ)

村内には外国人観光客で賑わう“高級ラーメン店”もある。

「名物のヤマメが一匹入っている一杯2000円の『小菅まるごとラーメン』が人気です。『もっと贅沢にしたい』と、煮卵や角煮のトッピングをてんこ盛りにして3000円ラーメンを楽しむお客さんも多い」(「麺屋 梅ノ木」店員)

村を挙げてのおもてなしで外国人観光客を呼び込むことに成功したが、課題も多い。

「コロナ以前から高齢化と後継者不足で宿泊施設や飲食店が減ってしまったので、富裕層の外国人たちにお金を落としてもらえる場所が少ない。小菅村全体が潤うには程遠い状況です」(村民)

小さな村のインバウンドバブルはまだ始まったばかりだ。

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[令和バブル]に乗れ!]―