―[貧困東大生・布施川天馬]―

◆大人が歴史を学びなおすために使える本
 みなさんは、歴史は好きですか? 大河ドラマや時代小説など、過去に思いを馳せる方は多いでしょう。最近では歴史をテーマにしたアニメやゲーム、マンガなども人気であり、触れる媒体は異なりながらも、各世代がそれぞれの方法で触れています。

 ただ、まじめに歴史を勉強するならば、やはり本で学ぶのが一番。ドラマや小説、ゲームやマンガではフィクションの要素が混じっていて、実践的な学習には役立たないことも多いからです。

 とはいえ、堅苦しい歴史書を紐解くのも難しい。今更高校の教科書を買ってきて勉強する気分でもない。今回は、そんな方に向けて「大人が歴史を学びなおすために使える本」を三種類ご紹介します。

◆○『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』
(SBクリエイティブ)

 最初に紹介するのが『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』。この本は、いうなれば「教科書よりも学びやすい教科書」。その理由は、歴史学習の進め方にあります。

 普通、教科書による学習では、様々な地域を同時並行で学習します。「同じ時代に世界ではどんなことが起きていたのか」を重視するためです。そのため、古代オリエントでメソポタミア文明を学んだら、古代エジプトへ話が移り、ペルシア王朝が勃興するまでの一連の流れが終わったかと思えば、時代をさかのぼって今度は古代ギリシアの学習へ移り変わるのです。

 この場合、ある程度世界史が頭に入った人には親切ですが、初学者には何がどこで起きたのか分かりにくい欠点もあります。そこで、この本では、それぞれの地域史が一区切りつくまで別の地域の歴史に飛びません。

 むしろ、その地域の歴史をある程度纏めて学習したほうが、事件の発端や経過、社会史の流れなども含めて分かりやすいのです。かつて歴史学習に挫折した経験のある方にこそおすすめの一冊。

◆○『アイム総理 歴代101代64人の内閣総理大臣がおもしろいほどよくわかる本』
(KADOKAWA)

 もう少しミクロなところから歴史を概観したい方には、こちらの『アイム総理』がおすすめ。「日本一生徒数の多い社会科講師」である伊藤賀一先生が執筆された著作。

 この本は、総理大臣全員を取り上げて、どのような人物かを徹底的に分析したもの。名前、出身地、生没年などはもちろん、就任時の年齢、退陣の理由、キャッチフレーズ、名言、就任前の職歴、総理になってから初めて行ったこと、口ぐせ、親族、はては友人関係まで洗い出します。

◆総理大臣にどこまでも詳しくなれる

 そのおかげで、記憶にも残りやすいでしょう。記憶というものは不思議なもので、実は情報が多ければ多いほどに頭に残りやすいのです。

 例えば、人の顔と名前を覚えるときも、その人の顔の特徴、体型、声のトーン、社会的な地位、風体から受ける印象などを総合していませんか? ただ顔写真一枚と名前だけを表示されても、なかなか覚えにくいでしょう。その人の好き嫌いの情報や勤め先での地位など、補足情報がついている方が覚えやすいはず。

 総理大臣にどこまでも詳しくなれるこの本は、近代日本の学習を更に面白くしてくれるはずです。

◆○『小学館版学習まんが日本の歴史』
(小学館)

 本では学習が難しい方は、マンガで学びましょう。2024年現在、「まんがで学べる日本の歴史」の本は、五つの出版社から出ています。

 それぞれに特徴があり、どれも一長一短ではあるのですが、ここでは敢えて『小学館版学習まんが日本の歴史』を紹介しています。一番スタンダードだと考えるためです。

 歴史系教科書の王道である山川出版社の教科書。これを監修している先生方が全巻を監修しているので、とにかく歴史的な事実に忠実に作られています。この本自体も歴史が厚く、何度も行われる改訂刷新のたびに、より正確な記述を心掛けながらブラッシュアップされています。

 近年では高校での歴史科目が「歴史総合」と名前を改めて、近現代学習の範囲がより手厚くなっていますが、その改訂に対応しているのも特徴。最新の受験事情にも対応しているのが嬉しいですね。

◆受験生にも役立つ内容

 実は、私もかなり古い版ですが小学館版の日本の歴史を全巻持っています。私が中高生になるころには、もはや30年前の歴史記述をもとに書かれている骨とう品のようなマンガになっていましたが、それでもその正確さは、当時受験生だった私の日本史知識にピタリと符合していき、あまりの情報の正確さ、細やかさに舌を巻いたものでした。中には、教科書をこれでもかと読み込んだ私ですら知らなかった出来事も。

 全20巻で約2万円と決して安くはない金額ですが、逆を言えば「たったそれだけの金額で、現状で一番正確な歴史漫画が手に入るチャンス」でもあります。これほどお得な買い物はこの先存在しないかもしれませんよ。

 ここまで紹介してきた本以外にも素晴らしい歴史書は数多くあります。千里の道も一歩からと言いますから、まずは一歩目を踏み出すことが大事。そうして深みに飛び込みたいと思ったら、より専門的な書籍に手を出すといいでしょう。

 みなさまの学習機会に貢献できることを願います。

<文/布施川天馬>

―[貧困東大生・布施川天馬]―



【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)