ガールズケイリンの人気筆頭格として、1つの時代を牽引してきた高木真備さんに、競輪にまつわる話を語ってもらう連載企画。高木さんは2021年の「ガールズケイリングランプリ」で見事に優勝。年間賞金女王の称号を獲得し、「やり切った!」という気持ちで選手を引退。現在は保護犬・保護猫活動、および競輪番組での解説者などの活動を行っている。
 そんな高木さんに元ガールズケイリン選手としての様々な裏話を聞いていく当連載企画。今回は以前も紹介した「競輪選手の職業病」にまつわる話の第2弾をお届けする。

◆元ガールズ女王が引退後も続く「職業病」とは

 以前に紹介した記事では、「高速道路で運転中、競輪のレース感覚で位置取りを気にしてしまう」という話があったが、他にも運転中に‟つい考えてしまうこと”があるようだ。

「運転中に赤信号で止まっているときに、複数の車線の道路で隣に車が並走していたら、信号が青になった瞬間『先に出たい!』という気持ちになってしまいます(笑)。これは完全に、レースで号砲が鳴った瞬間の感覚に近いのかもしれません。そんなにいきなり急発進するとかではないのですが、隣の車よりも少しでも先に出られたら『良いスタートが切れたな』と思ってしまいますね」

◆ママチャリ運転中にも“レース脳”に

 また、高木さんは引退後、日常生活でママチャリに乗ることがあるとのこと。そこで反射的に“競輪選手の動き”をしてしまいそうになったことがあるという。

「ママチャリに乗って走っていたとき、狭い道路で同じようなママチャリに乗っている人と並走になったことがありました。ハンドルとハンドルがぶつかると危ないので、並走になった瞬間、思わず肩を出しそうになってしまったんです。おそらく一般の方よりもハンドル同士がぶつかることの危険さを知っているので、ママチャリに乗っていても、ついその感覚を思い出してしまったんですよね。もちろん本当に肩を出すことはしなかったですけど、そのとき『あっ、私って競輪選手だったなぁ』と思いました(笑)」

◆サドルの“どこに座るのか”も意識してしまう…

 自転車に乗っているときの“元競輪選手あるある”は他にもあるようで、ママチャリであっても細かい競輪のテクニックを思い出してしまうタイミングは多いようだ。

「現役時代は、サドルの前に乗るか後ろに乗るかを意識して走っていました。まくりを狙って加速するタイミングなどは前に乗ります。そうすると大きな力は出せますが、前に乗ったままだとスピードの維持はできないので、加速した後はサドルの後ろに座り直すんです。そうすると引き足が使いやすくなって、上げたスピードを維持することができます。

そのクセが残ってしまっているようで……。ママチャリでも坂を登るときは前に入るし、平坦な道になったら後ろに座り直したりしています。ママチャリ乗りながら、サドルのどこに座るのか考える人なんていないですよね(笑)」

◆競輪選手がよく見る“悪夢”

 最後に“競輪選手あるある”として、現役時代から「よく見ていた夢」についての話を聞いてみた。高木さんは「レース前などの“ピンチの時の夢”をよくみていました」と話す。

「現役のときは、いろいろな競輪の夢をみました。自分だけスタートできないとか、自分だけユニフォームがないとか……。間に合わない系の夢が多かったですね。グランプリでなかなか勝てない時期に、1回だけグランプリ優勝するというポジティブな夢を見たこともありますが、基本的にはピンチの夢ばかりでした。間違えて宿舎にスマホを持ち込んだ夢をみたときなんかも、『どうやって宿舎から外に投げ捨てようか……』と、夢の中でめちゃめちゃ考えましたね(笑)」

 選手がみる悪夢にまつわる話は、現役選手の“あるある話”のようだ。職業病も含め、こういった選手の人間味が垣間見えるエピソードを知ることで、より一層競輪を楽しめるだろう。

取材・文/セールス森田

―[高木真備のガールズケイリントーク]―



【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント