シャンソン歌手クミコ(69)が、ニューアルバム「私の好きなシャンソンVol.2〜シャンソンティックな歌たち〜」を、7月10日に発売する。

1980年(昭55)に56歳で亡くなった、シャンソン歌手越路吹雪の名曲「愛の讃歌」「アプレ・トワ」を新たに録音して収録。今年は越路生誕100年、「愛の讃歌」の初録音から70年の節目の年。宝塚男役のトップスターとして活躍した越路は、退団後は歌手、ミュージカル女優として活躍した。「愛の讃歌」は、元々はフランスの歌手エディット・ピアフのヒット曲。作詞家岩谷時子氏が、元の歌詞の激しすぎる愛の告白の内容から離れて普遍的なラブソングに訳詞をしたことで、日本で受け入れられて越路の最大のヒット曲となった。

今回のアルバムの制作にあたっては、音楽評論家の安倍寧氏(90)をスーパーバイザーに迎えた。生前の越路のスタッフでもあった安倍氏の助言を受けながら、レコーディングに臨んだクミコは「戦後日本のシャンソン状況にも詳しい、まさに『生き字引』でもある安倍先生により、今の時代にシャンソンを歌うことの意義が示されると思います。シャンソンにもフランスにも、特別な憧れがあったわけでもない私が、今なお歌っているのは不思議な巡り合わせのようで感慨深いものがあります。今の時代に生きるシャンソンを、聴いていただければ幸いです」と話している。

安倍氏は「越路生誕100年でもある今年7月、シャンソン喫茶の殿堂『銀巴里』出身で『愛の讃歌』と“同い年”のクミコが、新たに録音した『愛の讃歌』と『アプレ・トワ』を含むニューアルバムをリリースする。今の時代、岩谷時子さんの詩で『愛の讃歌』を歌い継げるのはクミコしかいない」と話している。

また、越路同様に生誕100周年を迎える本場フランスの世界的シャンソン歌手シャルル・アズナブールの名曲「帰り来ぬ青春」も日本語詞で収録される。「Yesterday when I was young」というタイトルで英訳され、世界的なヒットとなったアズナブールの代表曲だ。クミコは、2007年(平19)に初めて渡仏、パリでアズナブールにインタビューした。クミコは「『帰り来ぬ青春』は詩人の吉原幸子さんの作詞ですが、言葉が大きな位置を占めるシャンソンらしく、他の歌も岩谷時子さんをはじめとする詩と人生を見つめ続けた方たちの作品です」と話している。

他にも「倖せな愛などない」「私はあなたのもの」などの名曲を、ピアノと歌のみの極めてシャンソン的なシンプルな編成で新たに録音した。クミコが「銀巴里」のオーディションで歌った「サントワマミー」をクミコのライブ音源から収録。他に菅原洋一(90)とのデュエット「今日でお別れ」、美輪明宏(88)が作詞作曲した昭和の代表曲「ヨイトマケの唄」、エッセー集から生まれた「妻が願った最期の『七日間』」全15曲が収録されている。

◆クミコ 1954年(昭29)9月26日、茨城県水戸市生まれ。早大教育学部卒後、バンドに参加してボーカルとして活動。82年銀座「銀巴里」でプロデビュー。02年(平14)「わが麗しき恋物語」がヒット。10年NHK「紅白歌合戦」に初出場して「INORI〜祈り」を歌唱。15年「うまれてきてくれてありがとう」が日本レコード大賞作曲賞。17年に「クミコwith風街レビュー」名義で、全曲を松本隆氏(74)が作詞した「デラシネ」が日本レコード大賞優秀アルバム賞。血液型B。