ドナルド・トランプ前米大統領(77)の若き日を描いた伝記映画「ジ・アプレンティス」が20日、南フランスで開催中のカンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され、トランプ氏が製作者を提訴する意向を示していることが分かった。同作は、トランプ氏が米ニューヨークで不動産王として名をはせる姿を描いたもので、イラン出身のアリ・アッバシ監督がメガホンを取っている。

タイトルは、トランプ氏が司会を務め、その名を世界に知られるきっかけとなった米リアリティー番組のタイトルと同じ。米映画「キャプテン・アメリア」シリーズのバッキー・バーンズ役などで知られる俳優セバスチャン・スタン(41)が、トランプ氏を演じている。

米オンラインメディアのデッドラインによると、メインの上映館であるリュミエール劇場で上映された後、会場を埋め尽くした観客から11分間にわたるスタンディングオベーションが送られたという。

この上映を受けてトランプ陣営の報道官スティーブン・チャン氏は、「このゴミ作品は、長い間暴かれてきた嘘をセンセーショナルに取り上げた単なるフィクション」「バイデン大統領の違法な裁判と同様、ハリウッドのエリートらによる選挙妨害」と非難。「なりすましの映画製作者らのあからさまな虚偽の主張に対処するため、訴訟を起こすつもりだ」と述べ、提訴を宣言した。

トランプ氏のレイプシーンなども含まれていることから作品の評価は賛否両論あり、トランプ氏が「卑劣で病的」に描かれているとの声もあるという。

トランンプ陣営から訴訟を起こすと脅されたことを受けてアッバシ監督は、「トランプ氏が多くの人を訴えていることは誰もが話題にしますが、勝訴率については話題になりませんよね?」とコメント。トランプ氏と面会し、上映会を行う意向があると述べ、「必ずしも、彼がこの映画を嫌いだとは思わない」と語っている。

同作は、返り咲きを狙う11月の米大統領選を前に行われる、民主党のバイデン米大統領とのテレビ討論会に合わせて9月公開を目指している。(ロサンゼルス=千歳香奈子)