【桧山珠美 あれもこれも言わせて】

 若者に昭和レトロなるものがはやっているらしい。例えばカメラは「写ルンです」などの使い捨てや、フィルムが「エモい」と人気だとか。現像に出すまでどんなふうに写っているか見られないところがいいという。

 テレビも昭和ブームに乗っかり、バラエティーや歌番組でも昭和の懐古ものが急激に増えた。ドラマもしかり。昭和を描けばその時代を生きた世代には懐かしく、若者には時代劇感覚で楽しめるのかもしれない。

 今期連ドラで一番の話題作「不適切にもほどがある!」(TBS系)の人気の背景もそのあたりにあり。1986年と現代をタイムスリップし、ファッションや小道具に至るまで昭和の描き方が完璧だった。何よりも阿部サダヲ演じる主人公の娘・純子を演じた河合優実の存在が大きい。山口百恵や中森明菜、昭和のアイドルを彷彿させる昭和顔に魅了された視聴者も多いはず。このドラマの成功は彼女の昭和顔なくしてはあり得なかったと思うほど、魅力的に昭和の女子高生を演じていた。

 さらに24日放送のテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム「万博の太陽」。橋本環奈主演で70年の大阪万博を題材にしたドラマということだが、今風の顔立ちの橋本環奈の違和感がぬぐえない。そのせいか、いとこ役の飯豊まりえやその母親役の江口のりこの昭和顔にホッとする。ルッキズムと騒ぎ立てる輩がいようと見た目は大事で、昭和を描くのならできれば昭和顔と願いたい。

趣里にはキャンディーズのランちゃんの面影

 朝ドラ「ブギウギ」を見ていても、ヒロインのスズ子を演じた趣里も昭和のアイドル、キャンディーズのランちゃんの面影を感じさせる顔立ちは昭和顔だし、スズ子のライバルとして現れた新人歌手の水城アユミ(吉柳咲良)、マネジャーの柴本タケシ(三浦獠太)、スズ子の娘・愛子(小野美音/このか)、懐かしの付き人の小夜(富田望生)ら昭和顔だらけ。お手伝いさん役の木野花などは、この人以外はあり得ない。完璧な青森弁も込みでハマっている。

 月曜日からスタートする新朝ドラ「虎に翼」のヒロインを演じる伊藤沙莉も、どこから見てもTHE昭和顔なのでひと安心だ。

「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ系)で安藤サクラ演じるヒロインの子ども時代を演じた永尾柚乃も、あの類いまれなる昭和顔のインパクトで一躍人気子役の仲間入り。いまではCMにバラエティーに引っ張りだこだ。

 翻って旧ジャニーズのタレントのドラマにまったくリアリティーを感じないのは「脱昭和顔」だからなのか。中島健人や道枝駿佑よりも、やっぱり阿部サダヲや濱田岳に魅せられてしまう。

「ふてほど」のヒットもあり、今後、昭和ドラマが量産されるに違いない。だとすれば、昭和顔の需要はますます高まるだろう。

(桧山珠美/コラムニスト)