女優・伊藤沙莉(29)が主演を務めるNHK連続テレビ小説「虎に翼」の放送が、1日からスタートし、幼少期シーンがないことで賛否が巻き起こっている。今作は日本初の女性弁護士で、後に裁判官になった実在の三淵嘉子氏をモチーフにした物語。第1話から伊藤が演じ、女学生の制服に身を包んだ猪爪寅子として登場している。

 朝ドラといえば、主人公の幼少期をしっかりと描くシーンからスタートする作品がほとんど。2022年度後期「舞いあがれ!」や23年度前期「らんまん」でも、たっぷりと話数を使い、幼少期シーンが放送された。視聴者からは《幼少期パートからのスタートだと正直とっかかりづらい。いつも早く大人にならないかなと思いながら序盤を見てきた》という声もあったが、今作は1話から幼少期のシーンがないため、「テンポが良く飽きずに見られる」という高評価が目立つ。

 その一方で、《幼少期がないと、その後のセリフの説得力に欠ける》という声もある。「朝ドラに幼少期のシーンは必要ない」派と、「主人公のバックボーンを知ることでその後の活躍する過程に深みが増す」派で意見が分かれているようだ。

■「ヒロインを早く見たい」と願う視聴者も

「最近の朝ドラといえば、4作連続で幼少期の病弱設定が話題になりましたが、主人公の人生形成に大きな影響を与えた幼少期を描くと、設定が似通ってしまうというのもありますし、『見知った主演女優らを早く見たい』という視聴者の希望があると、どうしても幼少期シーンは前座のような扱いになってしまう傾向があるでしょう。今作で幼少期が描かれなかったことで改めて、ストーリー的にどうしても入れなければ成立しない場合以外は、幼少期シーンは回想でいいという意見が目立った印象です」(ドラマ制作関係者)

 また、朝ドラ放送が20年春から週5話に減ったこともあり、子役が演じる幼少期シーンの数話よりも、大人時代のメインキャストのエピソードを充実させてほしいというニーズの高まりも一因といえるだろう。

「同じく女性の社会進出というテーマや、女学生時代からスタートした朝ドラとして想起されるのは堀北真希が主演を務めた12年度前期放送『梅ちゃん先生』ですかね。幼少期シーンがなくて成立する条件としては、主演女優がやはり童顔であり、制服着用シーンなどに違和感がないかという点もあると思います」(同)

「虎に翼」の第1話は、新聞に掲載された日本国憲法の条文に目を通す主人公のシーンからスタートしたが、10代後半の多感な寅子を、童顔の伊藤が違和感なく演じていたことも、視聴者が感じたテンポの良さにつながった要因といえるだろう。

「感動できる展開も多い朝ドラの幼少期シーンですが、やはり子役の演技力に左右されてしまうというリスクはあるでしょう。それに伊藤さんは個性的な声音もありますし、伊藤さんの子供時代を違和感なく演じられる子役がいなかったというのも、幼少期シーンがなかった理由の一つとして考えられます」(同)

 伊藤の童顔ぶりが功を奏し、出だしはまずまず。このままテンポ良く展開していくことができるか。