【今週グサッときた名言珍言】

「『こんなに自由でいいんだ、ネタって!』って。『こんなにトガってていいんだ』と勇気をもらって」
(街裏ぴんく/日本テレビ系「ダウンタウンDX」4月18日放送)

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 いわゆる「ウソ漫談」(本人は「ファンタジー漫談」などと呼んでいる)を武器に、今年の「R-1グランプリ」(フジテレビ系)で優勝した街裏ぴんく(39)。彼はもともと、同級生とコンビを組んで活動していたが、解散してピン芸人になった。

 ちょうどその頃、関西の深夜番組でケンドーコバヤシが「人のプーさん」と題して舞台上で座り込み、最前列の女性のスカートの中をのぞいているという過激なネタをやっているのを見て、衝撃を受けた。その時、思ったことを回想して語った言葉を今週は取り上げたい。

 続けてぴんくは「そこからトガりにトガってやりたいことをやり続けようとして、『R-1』取るまで20年かかってるんで、あなたのせいです!」とケンコバを訴えた。

 ぴんくはピン芸人になってすぐに「ウソ漫談」にたどり着いたわけではなかった。最初はフリップネタ。といっても、もちろん普通のフリップネタではない。フリップを思いっきり投げて、キレまくるような芸風ですぐにウケ始めた。だが、絵が描けないため、限界を感じ、ぼやき漫談に変えた。これも好評で「俺のお笑いは間違ってなかったんや」(サイゾー「日刊サイゾー」2023年6月22日)と感じていた。

 しかし12年、27歳の頃に上京すると、東京のライブでは途端にウケなくなった。コワモテがキレていると、怖さが勝ってしまったのだろう。その頃に見つけたのが、「浅草リトルシアター」という小さな劇場だった。エントリー代なしでも、1日3〜4回出演できる。しかも客はお笑いを見に来るファンではなく、観光中にフラッと立ち寄るような人たち。だから毎回、客層が違う。修業の場に最適だった。

 そこで研ぎ澄ましたのが、芸人になった当初から本来やりたいと思っていた「ウソ漫談」だったのだ。ピンになり、ウケるのも、スベるのも、全部自分の責任という状態が心地よかった。

「僕は漫談が天職です。やっぱり芸人は100%出せないとダメだと思う」と語るぴんくは、「R-1」王者になる直前の頃、トガりすぎてブレーキをかけたくなることはないかと問われ、「むしろ尖り続けたい」ときっぱりと答えている。「自分が唯一無二の笑いができているか、誰かと似たことをやってないかは常に自問自答しています」と(レコオーランド「FASHIONSNAP」24年2月9日)。

 その信念で唯一無二の“天職”である「ウソ漫談」を築き上げたのだ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)