どこもかしこも値上げの中、うれしいニュースだ。イトーヨーカ堂は1日、「買い回り頻度の高い71品目」を平均10%値下げすることを発表した。物価が上昇し、実質賃金のマイナスが続く中、生活が苦しくなった消費者は大助かりだ。

 実際、続出する値上げにより、全国のスーパーでは日用品の買い控えが起こっている。業界で危機感が広がったことにより、値下げを決断したのだろうか。本紙の取材に対し、イトーヨーカ堂の広報はこう回答した。

「イトーヨーカ堂とヨークを経営統合したことで、扱う商品数の絞り込みや物流の効率化を図りました。値上げが続く昨今の情勢を考慮してというよりは、経営統合でコストカットを模索した結果、値下げが実現したということです。今後もより効率化が実現すれば、引き続き値下げしていくことを考えています」

 イオンも3月26日にプライベートブランド「トップバリュ」の28品目の値下げを発表している。

 今後、値下げの動きは広がっていくのか。経済ジャーナリストの井上学氏が言う。

■続出の可能性も中小企業は淘汰

「今後は2つの方法で、値下げが広がる可能性があります。1つ目は、ローソンとワタミが配送の協業を発表したように、他社と手を組んで配送の効率化を図り、輸送費を抑える方法です。2つ目は、イオンやイトーヨーカ堂のように、他社を吸収合併することで、コストカットを実現する方法です。ただ、いずれも大量生産、大量取引が大前提のため、個人経営など小規模の企業は値下げ競争に参戦するのは難しいでしょう。例えば、都市部に20店舗ほどを抱える中堅どころのスーパーなどは、大企業に買収されることで生き残りを図るしかなくなっていくでしょう」

 今後も値下げ競争に追随する企業が現れる可能性はある。しかし、慣れ親しんだ小規模店が消えていく恐れがある。