【ワンニャンのSOS】#56

 春につらい病気というと、花粉症です。読者の方も薬でしのいでいる方が少なくないでしょう。実は犬や猫なども花粉症になることがあります。今回はペットの花粉症についてです。

 ヒトの花粉症はスギやヒノキなどが知られていますが、ワンちゃんは違います。動き回るエリアは地表から1メートル未満がほとんど。高所から飛び交う樹木の花粉よりは、地表に生える草や花などが飛ばす花粉や分泌物の影響が強い傾向です。

 ヒトの症状は、くしゃみや鼻水、鼻づまりなど鼻の粘膜に起因するもののほか、目のかゆみや充血など目の症状が中心でしょう。一方、犬にも鼻と目の症状がありますが、地表近くを動くせいか、草花に腹や肉球などが触れることで、アレルギー性の接触性皮膚炎に悩む方が多いでしょう。お腹や肉球が赤くなったり、腫れたりして、かゆくなるのが典型。そこをなめたり、かいたりしているうちに患部の状態を悪化させ、二次的に細菌が感染することもよくあります。

■別の病気でないかをチェック

 花粉症と診断するには、別の病気でないことを鑑別することが不可欠。その対象として多いのは、口の中の状態です。歯石が沈着したり、犬歯の根っこが緩んで鼻に向かって瘻管ができていたりすると、くしゃみが連発しやすい。鼻や上あごの炎症も同様です。花粉による接触性皮膚炎については、ノミなど寄生虫の影響でないことを確認することが欠かせません。

 アレルギー検査は、草花や樹木の花粉はもちろん、衣類や敷物の素材、食餌の成分など100項目近くのアレルゲンをチェックできるものもありますが、かかりつけのワンちゃんならカルテのチェックも重要です。過去をさかのぼることで、同じ時季の同様の症状であることから、ある程度推定できますから。そうすれば、わざわざ高価な検査をしなくても、該当するシーズンは、散歩コースを変えて植物の多いエリアを避けることで、症状の軽減を図ることも可能です。

 散歩コースの変更でよくならなければ、鼻と目の症状は抗アレルギー薬で治療することが多いと思います。接触性皮膚炎については、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎に使用されるかゆみ止めが効果的です。

 ただし、これらの薬を長く使用していると、効き目が悪くなることがあるほか、かえって免疫力を低下させ、本来無害な常在菌の“暴走”で症状をこじらせる恐れもあります。

 室内飼育のネコちゃんの花粉症だと、アレルゲンの特定はそれほど難しくはありません。春に部屋に飾る観葉植物の影響が疑われますから。その植物を室内に置かないようにすれば、しばらくしてよくなります。

(カーター動物病院・片岡重明院長)