帝国データバンク「スポーツ業界」(スポーツ用品の卸売りや小売店、ゴルフ場など)の景況感調査(9日発表)の結果、現在の景況感を「悪い」と回答した企業は43.3%で、「良い」の20.0%を大きく上回った。

 少子高齢化やレジャーの多様化など長年、潜在顧客層の減退に苦しむ業界だが、追い打ちをかけているのは円安・物価高だ。原材料や輸入品の価格高騰に加え、実質賃金は24カ月連続のマイナス。需要はますます縮小し、スポーツ離れに拍車がかかりかねない。

 すでに、子どもたちの部活動では、異変が起きている。スポーツに取り組む中学生が急減しているのだ。日本中学校体育連盟によると、13〜15歳の運動部加盟人数は、2009年度の約233万人から、昨年度は約180万人と、50万人も減少。特に軟式野球の競技人口は約30万人から約13万3000人と半減を超え、減り幅が激しい。

■トップクラブ入りは裕福な子だけ

 少子化の影響はもちろん、経済的な理由も大きい。野球の場合、バットやグラブ、スパイクなど道具一式をそろえるのに、最低でも5万円はかかる。金銭面の負担が、競技人口の減少を食い止める上で障壁となっている。

 実際、野球少年の経済格差は広がりつつある。スポーツライターの中島大輔氏はこう話す。

「学校現場では部活動の見直しが進み、活動日数が減少しています。本気で野球に取り組みたければ、より金銭的な負担の大きい硬式野球のクラブチームに入るしかない。家庭に余裕がなければ、トップクラブを目指すことが以前より難しくなりつつあります」

 格差の影響が及んでいるのは、野球少年だけではない。

「これまではお金がかからなかった部活動ですが、近年は地域移行が進み、月謝を払うなど『習い事化』の流れにあります。経済的に余裕のない生徒は、スポーツ活動に参加できなくなる恐れがあります」(中島大輔氏)

 スポーツは裕福な家庭しか楽しめなくなるのか。「自治体による補助金の交付など、生徒をどうサポートしていくかが課題」とは中島氏だ。