動力に電気を使う電動車が普及している。昨年1年間の国内電動車販売台数(乗用車、登録車と軽自動車の合計)は、暦年ベースで初めて電動車比率5割を超え、ガソリン車を上回った。電動車に追い風が吹く中、今年度も購入に対する補助金受け付けがスタート。対象車両の一部では補助額が昨年度と異なるなど注意点もある。狙い目も含めたポイントについて、自動車ジャーナリストの横田晃氏に聞いた。

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 電動車は、ガソリンエンジンと電気モーターの動力2つを搭載するハイブリッド自動車(HV)が先駆けで、充電不能なHVに充電を可能にしたプラグインハイブリッド自動車(PHV)のほか、電力のみで走る電気自動車(EV)、そして水素と酸素で発電してモーターを動かす燃料電池自動車(FCV)を含む。この4つのタイプの合計販売台数は、2022年に比べて26.6%増の約201万台だった。

 ガソリン車を含む乗用車全体は約399万台で、電動車比率は初めて50.3%と過半数に。そのトップランナーはHVで約187万台(構成比46.8%)だが、EVは前年比51%増の約8万9000台(同2.2%)、PHVも前年比38%増の約5万2000台(同1.3%)と伸びている。電動車シフトが強まっていることが見て取れるだろう。

 そこで注目は電動車の購入に対する補助金だ。国が経済産業省の予算で「CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)」を行っているほか、都道府県など地方自治体が行っていることもある。それぞれチェックしておこう。まずは対象車だ。

「『CEV補助金』はEVのほかPHV、FCV、超小型モビリティー、ミニカーの新車が対象で、HVやクリーンディーゼルは対象外。東京都が行っている『ゼロエミッションビークル(ZEV)』の対象も、国と同様です。ですから、電動車の主力であるHVを購入しようとしている方は、補助金の対象外ですから注意した方がいい」

 経産省の場合、補助金はEV85万円、軽EV55万円、PHV55万円、FCV255万円が上限だ。東京都はバッテリーから電力を取り出せる給電機能があると、EVとPHVは45万円で、FCVは110万円となっている。

 このほか東京独自の上乗せメニューも充実していて、たとえば再生可能エネルギー100%電力の契約でEVは15万円、自宅への充放電設備導入(V2H)で同10万円、メーカーの販売実績による上乗せで最大10万円。再エネやV2Hの導入は難しくても、メーカーの販売実績分は対象メーカーなら自動的に上乗せされる。トヨタ、日産、三菱などは10万円だ。この3社のEVなら、国の補助と合算して補助金額は、普通車140万円、軽110万円に上る。

■東京千代田区は国と都と合わせて160万円

 国や都道府県のほか、市区町村などの自治体でも、同様の補助金を設けていることがある。たとえば、EVの場合、東京都千代田区は20万円、栃木県大田原市は10万円などだ。千代田区在住でEVを購入する場合、最大160万円の補助金が得られることになる。ありがたい金額だろう。

同一車種でもグレードで金額にバラつき

 ただし、国の「CEV補助金」については、各燃料カテゴリーの車種だからといって、満額の補助金を得られるわけではない。

「昨年度までは、給電機能の有無と型式登録による違いがある程度でしたが、今年度からは新たに設けられた評価基準によって各メーカーの車種ごとに採点し、それぞれの点数によって補助金額が細分化されています。補助金を前提にして電動車の購入を考えている方はまず経産省の『CEV補助金』のHPで、購入対象の車種が補助金の対象かどうか、補助金があるとすればどれくらいかはチェックすべきです」

 たとえば世界的に人気のEVテスラモデル3のうち満額の補助金85万円の対象となるグレードは「AWDロングレンジ」のみで、「RWD」「パフォーマンス」は65万円だ。

 トヨタbZ4Xはすべてのグレードで満額の85万円だが、レクサスRZ450eでは、「version L」が85万円で、「First Edition」は68万円となっている。

 同じメーカーの車種でも、補助金額はグレードによって微妙なバラつきがある。

 全体の傾向として、トヨタや日産など日本車は補助金額が高く、輸入車は低い傾向だ。

「米国のテスラや日産リーフ、トヨタのレクサスなど一部の高級EV車では、1回の充電による走行距離が500キロくらいの車種もありますが、一般にEVは1回の充電での走行距離が短いのがデメリットです。また、高速走行では電費が落ちやすいし、寒冷地ではバッテリーの消耗も早い。欧米メーカーは、伝統的にロングドライブと高速走行に強みを持つことが多いので、米国で富裕層にテスラが売れたのも、あくまでもガソリン車のセカンドカーとしての位置づけです。日本でも長距離を運転する人はガソリン車優勢で、バッテリー性能や充電スピードからEVは街乗り中心。補助金額に大きな幅を設けたことは、ドライバーにクルマの使い方を明確化する点で意味があると思います」

2台目にお勧めな「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」

 そこに着目すると、補助金が役立つ車種があるという。

「EVの軽自動車です。国産では、日産サクラと三菱eKクロスEVが国の補助金対象で、いずれもすべてのグレードが満額の補助金55万円となっていて、東京都の分と合わせると110万円をカバーできます。このところ人気のサクラXは、メーカー希望小売価格が255万円ほどですから、差し引き145万円ほど。この価格は、ガソリン車の日産デイズの最安値グレードとほぼ同額ですから、2台目にお勧めです」

 この2車種は共同開発されたもの。実質的な“兄弟車”で、1回の充電による走行距離は180キロ。毎日の買い物や家族の送迎などには申し分ないだろう。前述した通り東京都千代田区でサクラを購入するなら、さらに20万円の補助金があるので、実質的な負担額は約125万円に下がる。

 では、申請方法はどうするか。国の場合は、補助金の対象車種を購入したら、運輸局に車両を登録。受理された日から1カ月以内に必要書類を記入して次世代自動車振興センターにウェブか郵送で提出する。申請は先着順で、予算が消化されたらオシマイ。早い者勝ちだから、検討している人は急ぐべきだ。申請について分からないことがあれば、ディーラーに相談するといい。

 ちなみに補助金で購入したEVなどは3〜4年間、保有するのが義務。やむを得ず手放すときはセンターへの事前手続きが必要になる。センターは定期的に保有状況をチェックしていて、勝手に売却したことなどが判明すると、補助金の全額返納が求められることもあるという。