ドジャース大谷翔平(29)の元通訳・水原一平氏が引き起こした前代未聞の賭博醜聞および不正送金問題は、大谷の代理人のネズ・バレロ氏を筆頭とする「チーム大谷」の脆弱な危機管理体制が原因だ。米国内では「大谷がバレロ氏をクビにして、別の代理人と契約するのでは」という見方が出てきている。(【前編】からつづく)

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 そこで、大谷の新たな代理人に浮上しているのが、大手エージェント事務所として知られる「ワッサーマン・グループ」である。

 ケーシー・ワッサーマン氏が代表を務める同事務所は本塁打王3度のカージナルス・アレナド、最優秀救援2度のメッツ・ディアスらの有力選手とクライアント契約。日本人選手ではドジャースの山本由伸、パドレスのダルビッシュ有、カブスの鈴木誠也、メッツの千賀滉大、16日にDeNAへの復帰が正式に決まった筒香嘉智(前・米ジャイアンツ)らを顧客に抱え、昨年のWBCに日本代表で出場したカージナルスのヌートバーも契約している。MLB以外にも米プロバスケットボールNBAレイカーズ・八村塁も顧客に名を連ねるなど、日本人選手のマネジメントに豊富な実績と経験も持っている。

 その「ワッサーマン」きっての敏腕として知られるのが、山本由伸の代理人を務めるジョエル・ウルフ氏だ。昨オフ、山本の投手史上最高額となる12年約460億円の超大型契約をまとめたスーパーエージェントのひとり。昨年12月にプロスポーツ史上最高額の10年1000億円超の契約を結んだ大谷の代理人にふさわしい人物であることは確かだ。

 大リーグに詳しいスポーツライターの友成那智氏がこう言った。

「ワッサーマン・グループは多くの有力選手を顧客に抱え、クライアントとの契約規模は、スコット・ボラス氏が率いる“ボラス・コーポレーション”に次いで2位と、米プロスポーツ界では絶大な影響力を持っている。山本以外にも、ドジャースにはグラスノー、K・ヘルナンデス、トラメル、ハドソンらの顧客がおり、球団とのつながりも深い。昨オフのFA市場の目玉左腕だったモンゴメリー(現ダイヤモンドバックス)のようにボラス氏から『ワッサーマン』に乗り換える選手も少なくありません。バレロ氏のもとですでに10年契約を締結したとはいえ、年間の副収入がMLBトップの98億円超とも言われる大谷には新たなスポンサー契約も見込めるだけに、ワッサーマン側としても顧客に加えたいのは間違いありません」

 大谷のワッサーマン・グループへの移籍は米球界にとっても好都合。トップであるケーシー・ワッサーマン氏は28年ロサンゼルス五輪の大会組織委員会委員長でもある。今年2月のオーナー会議(フロリダ州オーランド)では全30球団の経営トップに対して、レギュラーシーズンの中断と現役メジャーリーガーの派遣を要請した。

「ロス五輪の追加競技として復活する野球において、大谷は欠かせない存在です。現役メジャーリーガー、特に大谷の存在はチケット販売やテレビ視聴率をも左右するだけに、大会組織委委員長であるワッサーマン氏は是が非でも出場させたいはずです。大リーガーの出場が容認されれば、ド軍に大谷の日本代表への派遣を要請できるだけに、今のうちに囲い込みたいところでしょう」(友成那智氏)

 昨オフのFA市場では金満球団によるマネーゲームが展開されたが、今度は代理人による大谷争奪戦が勃発しそうだ。

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 水原容疑者の「裏切り」だが、意外にも大谷にプラス効果をもたらしている側面もある。関連記事【もっと読む】…では、そんな「皮肉な副産物」について詳しく報じている。