大相撲の春巡業は18日、千葉・浦安市で開催され横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)が、夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)で新三役が確実視される大の里(23=二所ノ関)に、ぶつかり稽古で胸を出した。横綱が、将来の横綱候補に対し、さながら“帝王学の伝授”ともいえる胸出しは約5分。息も絶え絶えの新鋭に対し、横綱は時折、笑みを交えながら、こちらも汗だくになりながら鍛え上げた。

横綱が、次期大関や横綱候補とされる新鋭に対し、巡業のぶつかり稽古で鍛えるのは、これまでもあったシーンだ。そんな思いも照ノ富士にあったのか…と思いきや「体がデカい人に胸を出そうと思ってただけだよ。(相手は)湘南乃海でもよかった」と涼しい顔。それでも食い下がろうとする報道陣に、笑みを浮かべながら「そんなに(大の里に)期待するコメントがほしいの? 普通でしょう。頑張ってるんじゃないの」とかわした。

特別な思いがあって意図した上での指名ではないという。そう否定しながら、大の里に対する期待の言葉は、あふれ出てくる。「いい体をしている」と口火を切った後は、期待すればこその? 注文も交えながら熱弁をふるった。

照ノ富士 足りないものは、いっぱいある。体当たりで、ただ走っているだけ。あれだけの体があるんだから、無理して出る必要はない。気持ちに余裕がないから、ただ単に当たって走ろうとする。そうじゃない。やめるところはやめる(一呼吸置いてとまる、の意)。もう1度、体勢を整えてから出るとかね。

長所を引き合いに出して、その裏にある改善点も指摘する。「立ち合いの後の出足は、いいものを持っている」。裏を返せば、立ち合いに難あり、ということか。そこまで言うと「俺より師匠(二所ノ関親方=元横綱稀勢の里)に教わった方がいいよ」とそれ以上の多弁は控えた。

もちろん、幕下10枚目格付け出しから所要6場所の丸1年で三役の座をつかもうとする大器への評価も忘れない。「結果を残しているのは、それなりの実力があるということ。ラッキーでここまで来られるわけじゃない。結果を残していること自体が評価。そのうち相撲を分かってくると思うよ」。余裕たっぷりの横綱だった。