<ヤクルト2−0広島>◇15日◇坊っちゃんスタジアム

ヤクルトのドラフト2位ルーキー松本健吾投手(25)が、球史に名を刻んだ。プロ初登板&初先発で、いきなりの完封勝利。新人がデビュー戦で無四球&2桁奪三振&完封は、史上初の出来事となった。

悔しさを味わったマウンドでプロ1勝目をマークした。東海大菅生3年時の17年に、愛顔(えがお)つなぐえひめ国体で登板して以来の坊っちゃんスタジアム。準決勝で現広島の中村奨成擁する、広陵に4−10で敗れた。先にプロ入りした中村奨。松本健は亜大−トヨタ自動車を経て、プロの扉を開いた。2月は新人で唯一の1軍キャンプメンバーも、開幕からは2軍暮らし。DeNA度会、西武武内など、開幕から活躍する同じ23年ドラフトの同期なども見て「刺激というか、悔しい思いもありました。でも『今に見てろ』という感じで、そういう風には考えていました」とデビュー戦の舞台に立った。

眠れない夜を過ごし、また1つ大きくなった。3月13日のDeNAとのオープン戦(横浜)では1回6安打7失点(自責5)とメッタ打ちにされた。「悔しすぎて、夜寝られなくて、ずっとその時の映像を見たり、前の映像を見比べたり。その日のコメントではいい経験になったみたいな、カッコつけて言っていたんですけど、全然そういう風には思っていなくて。悔しくてたまらなかったです」。気付けば、外は明るかった。燕じゃなく、スズメの「チュンチュン」という鳴き声も聞こえてきた。

両親も観戦に訪れた中、堂々と右腕を振り、華々しく第1歩を刻んだ。【栗田尚樹】

▽偉業のヤクルト松本「全くイメージしていなかったというか。本当に最初から全力でいって、後は先輩方につなぐとおもって投げていた。それが気付いたら9回になっていた」

◆松本健吾(まつもと・けんご)1999年(平11)4月14日生まれ、東京・中野区出身。東海大菅生3年夏の甲子園では2回戦の高岡商戦で完投勝ちするなど4強入り。亜大を経てトヨタ自動車では昨年都市対抗で優勝に貢献。昨年ドラフト2位でヤクルト入団。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。

▼初登板のルーキー松本健が10三振を奪って完封勝ち。初登板完封勝利は15年ジョンソン(広島)以来プロ野球30人目で、新人では08年大場(ソフトバンク)以来23人目。ヤクルトでは国鉄時代の52年小山以来、72年ぶり2人目だ。初登板で2桁奪三振の新人は93年伊藤(ヤクルト)以来となり、初登板で2桁奪三振の完封勝ちは36年藤村富(タイガース)40年清水(南海)87年近藤(中日=ノーヒットノーラン)に次いで4人目。松本健は与えた四死球が0。初登板で2桁奪三振の無四死球完封勝ちは、新人以外を含めプロ野球史上初の快挙となった。

▽広島小園(松本健の印象に)「低めに投げきって、手を出してしまうところに投げられた」

▽広島朝山打撃コーチ(松本健の印象に)「途中から変化球が多くなるのは分かっていたので、変化球狙いの指示も出していたんですけど、いいゾーンに投げられて見極めができなかったのか。対策を絞っていきたい」