◆記者コラム・タカ番24時

 昨秋の現役ドラフトでソフトバンクから日本ハムに加入した6年目の水谷瞬外野手(23)が、11日のソフトバンク戦(北九州)で1軍デビューした。6番・左翼で先発出場。3回1死満塁で同点の左前打を放ち、プロ初安打と初打点を記録した。

 8回で交代した水谷がベンチで試合を見つめていると、ソフトバンク三塁コーチャーの井出竜也外野守備走塁兼作戦コーチ(52)の視線を感じた。帽子のつばを触ると、にっこり笑ってうなずいてくれた。「うれしかった。〝頑固おやじ〟だったから」。井出コーチは「とりあえず1本出て良かったなという思いだった」と明かす。

 水谷はソフトバンクでの5年間、2軍で守備と走塁を鍛えられた。練習は体重が落ちるほど厳しかった。陰で涙したこともある。もちろん褒められたことはない。「2軍でやるためじゃなくて、1軍で活躍するために何を準備するか」―。口酸っぱく言われた。

 日本ハム移籍後の春季キャンプ紅白戦で本塁打を放った。井出コーチからLINE(ライン)が来た。「ナイスホームラン」―。気にかけてくれていたと実感した。だから「九州で打ちたかった」と強調する。

 「井出さんから守備を学んだ、と自信を持って言える選手になれた時が、恩返しだと思う」。水谷は前を向く。井出コーチは「まだ成長したとは思えない。これから。自信を持って守れるようになればいい」とエールを送る。1軍の舞台を経験した23歳が、いつか恩師に褒められる日が来ることを切に願っている。(濱口妙華)