神奈川県の高校の吹奏楽部で、パーカッションを担当する喜多龍之祐(きた・りゅうのすけ)さん。喜多さんには、話す時に言葉がなめらかに出ない「吃音(きつおん)」がある。

「吃音をいろいろな人に知ってもらいたい」思いから彼が結成したのが、吃音がある若者たちによる音楽団「コンアニマ」。「心を込めて」を意味する音楽用語から名付けた。

喜多さんたちは、地元・川崎市で主催した音楽イベントで、自分たちの思いを込めたオリジナルソングを披露した。

吃音は、発話障害のひとつ。原因ははっきりと特定されていないが主に3つの症状があり、最初の音を繰り返す「連発」・最初の音を伸ばす「伸発」・うまく言葉出ずに間が空いてしまう「難発」がある。喜多さんは小学3年生の頃から「難発」の症状が出始めたという。

大きな転機となったのは、中学2年生で生徒会長に立候補した時。自分の名前を言った際に吃音の症状が出て、周りの生徒たちが笑っているような雰囲気を感じたという。

それでも勇気を出して「僕は吃音があって、皆さんが聞き取りづらい点があるかもしれませんが、ご了承下さい」と話したところ、周囲にその気持ちが伝わり、自信へとつながった。

さらに高校生の時には、吃音がある若者が接客を体験できるイベントに参加。“ひとりじゃない”と互いに思える場所を作りたいと考え、音楽団「コンアニマ」を結成した。

「コンアニマ」のメンバーは5人。イベントの4か月前にオリジナルソングの歌詞作りを始めてアイデアを出し合うが、言葉がスムーズに出ないことも。それでも、メンバーたちはこれまでの経験や思いをぶつけあい、喜多さんはその声をしっかりと書き留めていった。約2か月後に歌詞が完成。そこには、彼らの「吃音との向き合い方の変化」も含まれていた。

1番に綴られていたのは「震えながら口先で歌う この歌はいつか音を纏いますか」。これは「難発」の症状で言葉は出ないが口はその形になっているというこれからの不安を表した。一方、2番は「晴れ晴れと口先で歌う この歌はいつも音を纏っていた」。これは吃音の症状が出ても「まあいいか」と自分を受け入れられるようになったことを表現した。

完成した歌詞に、何度も音を重ねるメンバー。喜多さんはその音楽をひとりでも多く届けるために、自信を持てるきっかけとなった母校の中学校などにイベントのチラシを配った。「普段のしゃべり言葉では、どうしても伝えきれない吃音への思いを音楽に乗せて伝えたい」。

そしてイベント当日、集まった100人以上のお客さんの前でオリジナルソングを披露。喜多さんたちは、“吃音を知ってほしい”思いを届けた。

※詳しくは動画をご覧ください。(2024年5月7日放送「news every.」より)