現地時間8日のツインズ戦で第3号を放つなどホームラン量産体制に入りつつある大谷、2試合連続で好投した山本由伸の活躍で注目が集まるロサンゼルス・ドジャース。MLBフリークかつスポーツメモラビリアに明るいAki氏が、韓国のソウルシリーズとLAでのホーム開幕戦を生観戦した。現地ファンの“リアルなオオタニ評”に加えて、観戦旅行を予定しているファンに向けて、エンゼルスとは違う面など“ドジャースタジアムの歩き方”をレポートしてくれた。(全3回の第1回/第2回、第3回へ)

「デビュー戦」というフレーズは心高まるもの。

 大谷翔平のエンゼルスでのMLBデビュー戦、初勝利を現地観戦した。だからこそ今回、10年7億ドル(約1015億円)という北米スポーツ史上最高額の契約を結んだドジャースでのデビューを目に焼きつけるため、韓国での開幕シリーズ2試合、そしてドジャースタジアムのホーム開幕戦から4試合を現地観戦してきた。そこで……。

〈韓国初戦後の水原氏報道による感情の乱高下や韓国、ロサンゼルスの現地の反応〉

〈現地ドジャースショップのグッズの状況や球場内飲食店事情〉

〈ドジャースタジアムとエンゼルスタジアムの違いや行き方・手荷物などの注意点〉

 今回経験した3つのテーマを、今後ロサンゼルスで観戦される方のために記しておきたい。

チケット争奪戦の中で韓国の開幕戦を見られたが

 初めて韓国の地で開催された、MLB公式戦。会場となった高尺スカイドームは座席数1万6744席という少なさで、大谷のドジャース移籍によるチケット争奪戦の様子がメディアを賑わせたが――韓国在住の友人がチケットを手配してくれたお陰で2試合を現地観戦する幸運に恵まれた。一方で初戦の翌日、大谷が今まで行動を共にしてきた水原一平元通訳の報道が駆け巡る、衝撃の2日間となった。

 初戦はパドレス金河成(キム・ハソン)の凱旋試合ということもあり、試合前から球場の熱量も物凄かった。大谷はダルビッシュ有から移籍後初安打を放つなど、接戦の好ゲームとなった。

韓国人女性の友人が残念そうな表情で…

 翌日の第2戦こそホームランを、と期待する高揚感に溢れていた――そんな初日だったと記憶している。そんな高揚感から奈落の底に落とされたような気持ちになったのは、2日目の朝7時過ぎのことだった。

 えっ、悪い夢? 今日はエイプリルフール?

 当初は前述のニュースを上手く理解することができなかった。

 時間が経過するにつれて詳細が明らかになる中で、そんな状況では大谷はスタメンを外れるのでは? 不安を抱えながら球場に向かった。この日もチケットを手配してくれた韓国人の友人と一緒に観戦したのだが……。

「何で今日なの? 韓国が終わって米国に戻ってからでも良かったのに」

 という彼女の言葉と残念そうな表情が印象的だった。それと同時に韓国の方々に対して、少し申し訳ない気持ちになった。

金河成と同等以上に大谷ユニを見ただけに

 大谷がスタメンを外れることはなかったが、この日初めて姿を現したのはプレーボール直前のスタメン発表時。もしこの事態がなければ韓国のファンの前でフリーバッティングを披露して、看板に何度も当てるなど衝撃の打撃を見せてくれたかもしれない、と考えた。

 試合でもライトへの大飛球がスタンドに一歩届かなかった打席を見て、もし大谷が睡眠時間をしっかりと確保できていたら届いてたのでは……など、どこかモヤモヤした中での観戦となってしまった。それでも韓国のファンは金河成と同等、むしろそれ以上に大谷を温かく迎えてくれたし、ユニフォームの数でも大谷が一番多かったように思う。

 今回の韓国シリーズが盛り上がっていたことは間違いない。ただそれだけにもっと純粋に野球だけを楽しめる環境であって欲しかった――そんな韓国の開幕シリーズだった。

ドジャースタジアムでの開幕戦、現地の雰囲気は?

 そして1週間後、次はドジャースタジアム、ホームでの開幕だ。米国のファンは今回の事態を受けても温かく迎えてくれるのか、ブーイングなどあったらどうしよう? そうなったとしても、全力で声援と拍手を送ろう。そんなことを考えながら、ロサンゼルス行きの便に乗った。

 ロサンゼルスでの開幕戦当日、朝はまだ春先ということもあって肌寒い空気だったが、いつものロサンゼルスらしい真っ青な空が広がっていた。開幕戦はデーゲームなので、練習も調整程度だろうと考えながら球場へ向かった。

 球場に入ると、大谷待ちと思われる日本の報道陣が多数ベンチ前で待機していた。他の選手はアップを始め、山本由伸もブルペン入りする姿も見ることができたが、大谷は練習時間まで姿を現すことはなかった。

 試合開始前の入場ではバックスクリーン後方から青のカーペットが敷かれ、両脇に選手の家族や関係者が見守る中、監督・選手が登場する演出だった。デーブ・ロバーツ監督、ムーキー・ベッツに続いて大谷が登場、2番DHコールの中、球場は大歓声に包まれ、少し安堵したことを思い出す。

 この際、大谷の表情には笑顔が溢れていたのがとても印象的だった(この場に真美子夫人やデコピンもいてくれたら……とも想像したが)。

「オオタニ、被害者だよね」「一緒に応援しようぜ」

 国歌斉唱、セレモニーを経て試合開始。1回裏、ついに大谷の第1打席が回ってくる。実は試合開始前、近くに座る地元ファン数人と話してみた。

「絶対に大歓迎だよ」

「オオタニ自身は賭けもやってないって言ってたし、被害者だよね」

「全く気にしてないよ。一緒に応援しようぜ!」

 少なくとも自分が話した限りは、大谷に否定的なファンにはひとりもいなかった。ただ打席となると話は別で多少のブーイングがあるかも……など思いながらその時を待った。

歓迎のスタンディングオベーションと「HOT・AIR」

「2番DH・SHOHEI OHTANI〜!」

 1番のベッツが四球で出塁後、球場にコールがなされる。それを掻き消すような地響きのような大歓声が球場中を包む。そして一斉にファンが立ち上がった。

 スタンディングオベーションだ。

 ブーイングの声は聞こえない。温かい歓迎の空気が広がり、全くの杞憂に終わったと同時に、この瞬間をここで迎えられ、その熱気に触れられたことだけで今回の旅の目的は達成された。そして大谷はそのファンの歓迎に応えるようにホーム初打席で初ヒットを放った。

 ほっこりとした気分に浸りながら、この日の熱気をボトルにそっと詰めた。となりに座った女性ファンには「HOT・AIR」と説明しておいた(伝わったかどうかは不明だが)。

ドジャースタジアムの熱、そしてショップのリアルを見た

 韓国シリーズ2試合、そしてホーム開幕戦からの4試合の計6試合を――家族の大いなる理解もあって――現地観戦し、大谷のヒット計7本を見ることができた。

 ホームランを目撃することこそ叶わなかったが、ドジャースでの第1号ホームランの着弾点は筆者が現地ライトスタンドでグローブを構え、観戦していた位置付近だった。もし取ったら大谷へ返却するシミュレーションを入念に行っていたのだが、次回への楽しみに取っておきたいと思う(と同時に、キャッチされた方、本当におめでとうございます)。

 そんな大谷と山本が新たな挑戦の舞台に選んだドジャースタジアムでは、ショップにてさまざまなグッズ、“あの日本食”も販売されていた。そしてビールは日本円にして、1杯約2850円――スタジアムで目の当たりにした価格感や注意点なども紹介できればと思う。

<つづきは第2回>

文=Aki

photograph by Katelyn Mulcahy/Getty Images