大分県津久見市役所の新しい庁舎をめぐる住民投票が21日投開票され、津久見港の埋立地に新たに建設する案が賛成多数となりました。

津久見市 石川正史市長

「多くの方にご賛同いただけなかったことは残念と思っています。第二中学校の案のメリットをお伝えしきれなかったところがあると思っています」

津久見市役所は建設から60年以上が経ち老朽化による耐震性が問題となっていて住民投票では市民がその移転先を選びました。

当初計画されていた津久見港の埋立地に新たに建設する案と2023年の市長選で初当選した石川市長が打ち出した第二中学校の跡地などを活用して庁舎を分ける案の2つです。

21日に投開票が行われ、「新たに建設する案」が2倍以上の票を集め賛成多数に。

投票率は63・13%で成立の基準としていた半数を上回りました。

庁舎の移転へようやく方向性が定まりましたが課題もあります。

津久見市 石川正史市長

「ここまでの(投票)期間に大きな地震があったのは改めて災害について防災について皆さんが考えるひとつのきっかになったと思います」

先週、津久見市でも震度5弱を観測した地震。新しく建設する案にはどんな災害リスクがあるのでしょうか。

住民投票までもつれこんだ新しい庁舎の問題。災害リスクと今後について見ていきます。

津久見市民が選んだのは「埋め立て地案」でした。

市の中心市街地、津久見港の近くに新しく建てられる予定で市が負担する費用は19億2800万円を見込んでいます。

しかしながら、4月21日の会見で石川市長は「建設資材が高騰しているためさらに数千万円かかる可能性がある」と話しました。

この埋め立て地案ですが災害に対するリスクはどうなのでしょうか。

メリット・デメリット両方あります。

メリットがこちら。

多くの市民が避難できる津波避難タワーの役割が期待されています。

一方、デメリットはこちら。

建設予定地の海抜は2.5mで津波浸水区域の中です。

また地震の際、液状化現象が起きる可能性もあります。

市民が支持した埋め立て地案も、石川市長が推していた庁舎を分ける案も、どちらも災害リスクはありましたが選ばれた埋め立て地案を専門家はどう見ているのでしょうか。

都市計画や都市防災に詳しい大分大学の小林祐司教授は、「津波避難タワーにはなるが新しい庁舎だけで災害対応が完結するとは限らない避難のあり方は引き続き検討する必要がある」と指摘しています。

今後についてです。

近く臨時議会が開かれ予算案が提出されます。8月の工事スタートを目指すということです。というのも、2026年3月までに完成させないと国の補助金が適用されず市の負担が膨大になるので逆算すると8月には工事を始めたいという考えです。ただ2023年6月には新しい庁舎の入札が不調に終わりました。今回も入札に参加する会社があるかは不透明で、前途多難な幕開けとなりそうです。

臨時議会の日程は4月23日に決まる予定です。