株式会社バカンが提供する「アンベール」というトイレ広告メディアをご存知だろうか。サービス開始から年々設置数を伸ばし、2023年末にはついに1万カ所を突破。近年、企業やトイレ利用者から注目を浴びている「アンベール」の魅力と、今後の展開について株式会社バカン担当者に話を聞いた。

■「アンベール」とは?
AIとIoTを活用してムダな「待つ」をなくすサービスを提供する株式会社バカン。そのバカンが2020年末から本格展開を開始したのがトイレ広告メディア「アンベール」だ。

トイレ広告市場においては現在設置台数No.1(※1)を誇っており、都心部を中心としたオフィスや商業施設など約1万カ所で展開。トイレ個室内での認知獲得を行うことができる新たなデジタルサイネージメディアとして注目されている。トイレ空間は情報量が少ない1on1のプライベート空間であるため、利用者に対して明確に届けたいメッセージを伝えることが可能で、動画コンテンツはトイレ利用時のみサイネージ上で再生され、再生回数や配信結果を数値化できるという。
※1)株式会社バカン調べ(2023年11月時点)

また、滞在時間に応じて画面の表示を滞在抑制につながる表示に変更をしたり、混雑具合に応じて広告の長さを自動で調整するといった特許技術(出願中含む)を用いることで、トイレの混雑抑制も同時に実現するのだとか。

■「アンベール」の特徴とは?
では、「アンベール」は具体的にどのような特徴があるのだろうか。主なものを3つ紹介する。

1.情報量の少ないプライベート空間だから“届く”
お手洗いは視覚的な集中を妨げるノイズが少なく、利用者が集中してコンテンツを見やすいといったメリットが。実証実験では、広告の認知度約95%、配信したコンテンツの理解度約70%、認知リフト率および理解リフト率がそれぞれ613%向上、560%向上といった効果が確認されているという。

2.性別配信が可能
トイレの特性を活かすことで、男性トイレ・女性トイレ、それぞれへの配信の出し分けが可能。

3.購買力のあるビジネスパーソンにリーチ
都内を中心としたオフィスビルに勤務する、平均年収700万円以上の男女(※2)へコンテンツを届けることができる。
※2)株式会社バカンのサイネージ導入施設の入居企業のうち、年収公開している企業データより(2022年5月時点)

これらの魅力が徐々に伝わっていき、サービス提供開始して以来オフィスや商業施設などに導入が進み、2023年末には1万カ所超へと設置を拡大。また、設置は2024年半ばには1万2000カ所程度まで拡大する予定だという。

■「アンベール」を活用した連携も増加
トイレ空間をアップデートするために、ほかの企業や大学などと連携し、個室内のサイネージに情報配信する取り組みも増えているそうで、下記ではその一部を紹介する。

■大正製薬「大正健康ナビ」
生活者の日常生活に寄り添い、人生100年時代をサポートする健康の維持・増進に関する情報を発信する「大正健康ナビ」のコンテンツを、「アンベール」を通してトイレ個室内に配信。大正製薬が提供する健康で過ごすために気づいてほしいさまざまな身体の兆候や健康に関わる情報を、トイレを使う人々に対して効果的に届けることを目指している。

■国内最大級のお笑いWebサービス「bokete」
トイレ個室内のデジタルサイネージで、国内最大級のお笑いWebサービス「写真で一言ボケて(bokete)」のコンテンツを配信。また、boketeのサイトやアプリ内にバカンの公式お題ページを開設し、新たなボケも投稿できるように。トイレ利用時に“クスッと笑える”機会を創出し、トイレを利用者にとって「笑いでリフレッシュできる空間」にアップデートすることを目指している。

■金沢大学「ふむふむフェムテック」プロジェクト
金沢大学が取り組む、トイレ内をフェムテックに関する情報ステーションとして活用する「ふむふむフェムテック」プロジェクトをサポート。フェムテックをはじめとした女性の健康課題に関する啓蒙コンテンツを、トイレ個室内に配信している。

■「設置箇所はまだまだ増えるの?」担当者に話を聞いた
広告という枠を超えて、さまざまな可能性を秘めている「アンベール」。株式会社バカン メディア事業本部 執行役員の鈴木さんに、今後の展開などについて話を聞いた。

――設置が1万カ所を突破したそうですね。すごい数字ですが、もしかして47都道府県すべてを制覇されていますか?

【鈴木】現在設置されているのは東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県を中心に、大阪、福岡、札幌などの都市圏で、2024年2月現在で16都道府県(※)に設置しており、四国・中国エリアを除く全国に展開をしています。47都道府県すべてにはまだ設置できていませんが、トイレの利用者数が多い都市圏を中心に今後も増やしていきます。直近では仙台駅前のエスパル仙台などの東北エリアや、東京では麻布台ヒルズに設置しています。
※関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県)、関西(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)、東海(愛知県、静岡県)、北海道・東北(北海道・宮城県、福島県)、九州・沖縄(福岡県、沖縄県)

――今後、強化するエリア、設置予定のエリアは?

【鈴木】都市部のオフィスビルや商業施設を中心に設置数を広げていきます。東京を中心とした首都圏を強化しておりますが、要望の多い関西や九州エリアの商業施設を広げていくことも考えております。特に利用者の多い駅直結の施設や、大規模なオフィスビルへの導入を強化してまいります。より多くのトイレに私たちのサービスが導入されていくことで、より多くの方がトイレの個室が空くのを待つ時間をなくし、利用したいときにすぐにトイレが使えるやさしい世界を作ることができればと考えております。

――トイレ内のデジタルサイネージ広告の強みやメリットはどういった点でしょうか?

【鈴木】広告主側のメリットとしては、たとえば、トイレ個室内での広告放映に合わせて、オフィスの手洗い場にハンドソープの商品サンプルを設置することで、商品の香りや洗い心地まで伝わる体験を提供できる施策が好評です。ハンドソープ以外でも同様に、保湿クリームやマスカラ、衛生用品、腸活飲料など幅広い体験機会を提供しています。商品の名前は認知していても、実際に使ってみなければ価値が伝わりにくい、という課題をお持ちの広告主様に特に重宝されています。

【鈴木】ほかには、完全にひとりきりになれる個室空間で、リラックスタイムに1to1のコミュニケーションを届けられることから商品名や効果効能が記憶に残りやすく、トイレ広告で見た内容を職場の同僚や上司など身近な人との共通の話題にしていることが調査の結果わかりました。デジタル広告ではターゲティングによって顕在化したニーズを刈り取れる一方で、世の中に数多くの商品があるなかで潜在的な顧客となりうるターゲットに対していかに「商品を検索するきっかけ」を生み出せるかがポイントとなっていますが、潜在層へのトイレ広告は検索のきっかけを生み出すことに最適なメディアとなっています。認知型の広告と併用して、よりターゲットに詳しい情報を知ってもらいたいときに、見逃されずスキップされないトイレ広告が選ばれています。

【鈴木】利用される方のメリットとしては、トイレ個室というプライベート空間なので、周りの目を気にせず落ち着いて情報を見られるので、腸や便通に関することや、生理やデリケートゾーンのケア、美容や薄毛に関する悩みなど、関心はあるものの人に相談しにくいことについての情報が利用者からも喜ばれております。トイレを利用している方と商品が適切なタイミングで出合うことで、価値が生まれていると考えております。

【鈴木】また、お笑いメディア「bokete」とコラボした“笑いでストレスを吹き飛ばせるコンテンツ”が利用者様から好評をいただいています。ニュースや天気などの日常生活で役にたつコンテンツはもちろんのこと、今後もトイレに行くことが楽しみになるようなエンターテインメントも提供していきたいと考えています。

――強化予定のサービス・内容について教えてください。

【鈴木】利用者から要望の多かったニュース配信が2月から始まり、今後天気予報や気圧予報、花粉症や紫外線などの予報コンテンツの配信も予定しています。通常の屋外メディアと異なり、一瞬ではなくじっくり読まれる特性を活かした、利用者に喜ばれるコンテンツ開発を進めてまいります。さらに金沢大学様の「ふむふむフェムテック」の取り組みをはじめ、女性の健康課題に関する情報提供を通じた社会全体の意識向上を担うメディアとしても、取り組みを広げてまいります。

【鈴木】また、弊社のトイレ個室メディアの多くが企業のオフィスビルに設置されていることから、産後リカバリーの(=出産後のあらゆる負荷を軽減する)ために、現状の産後女性・夫婦を取り巻くさまざまな課題へプロジェクトとしてアプローチを行っている「産後リカバリープロジェクト」にも、アンベールがメディアパートナーとして加わることで、社会の意識・行動変容の実現をサポートしてまいります。

単なる情報配信や混雑抑制にとどまらず、社会問題解決へのサポートなど担う役割が増えている「アンベール」。今後さらにそのニーズは高まり、活躍の場が広がっていきそうだ。

取材・文=矢野 凪紗