「推し活」によって、人生が豊かになったと感じる人は多いという。「推し」を応援する方法は人それぞれだが、グッズを購入したり、ライブやイベントに行ったりと、お金がかかることが多い。「やさしいお金の専門家/金融教育活動家」としてお金にまつわる情報をわかりやすく発信し、自身も「推し活」にいそしむ横川さんに、人生を豊かにするお金の使い方を聞いた。

■推し活は「マネースケジュールが立てやすい」
――そもそも「推し活」とは何ですか。
【横川楓】推し活は「推し」という具体的な対象を応援したり、めでたりする活動のことです。ライブやイベント、コラボカフェに行くほか、グッズを買ったり、推しと同じものを持ったりして、推しにまつわるモノやコトを生活に取り入れるのも推し活です。

――横川さんの推し活デビューは?
【横川楓】「美少女戦士セーラームーン」でしょうか。親に漫画やグッズを買ってもらい、集めていたのですが、思い返すとそれも推し活ですね。

――自分のお金で推し活を始めたのはいつ頃ですか。
【横川楓】高校生になってアルバイトを始めて、漫画をたくさん買っていました。親が漫画好きで、家にもたくさん漫画があったので、その影響だと思います。当時は電子書籍がなかったので「1巻から3巻まで読んで、おもしろかったら続きを買う」と基準を決めていました。

――現在は、具体的にどういった推し活にお金を使っていますか。
【横川楓】漫画のグッズを買ったり、イベントやコラボカフェには基本的に行くようにしています。あとは持ち物も、できるだけ推しに関連するモノを持ちたいですね。ほかのことにお金をあまり使わないので、ハイブランドと推し作品がコラボした高価な商品を買うこともあります。

――推し活を後悔せずに楽しむための、お金の使い方や考え方を教えてください。
【横川楓】推し活のいいところは、グッズやチケットなどの発売日が事前に発表されることが多いので、マネースケジュールが立てやすいということです。たとえば飲み会や食事会だと、いくら使うかは当日にならないとわからないことも多いですが、グッズ代やイベントのチケット代は前もってわかります。だから推し活のために使うお金を差し引いて、残りのお金でやりくりするという人が多いですね。

【横川楓】そうは言っても、周囲を見てみると、スケジュール帳に発売日と価格をきれいに書いている人もいれば、収入とほぼ同じぐらいの金額を使っている人もいます。貯金ができないという人もいるかもしれませんが、自分の生活を意識しておくことはすごく大切です。

――マネースケジュールを立てても、衝動買いなど予想外の出費があったときはどうすれば?
【横川楓】ある程度の衝動買いは、しょうがないと割り切ってしまうのがいいと思います。どうしても欲しいものって出てくるものです。我慢するより、ほかのところで節約したり、多く貯金できる月はいつもより多く貯金したりと、リカバリーを考えた方が手っ取り早いですね。

■推し活にお金を使う人は増加傾向
――以前、推しに使うお金は「人生の必要経費」とおっしゃっていました。その理由は?
【横川楓】今の時代、推しが精神的な支えになっている人も多いです。たとえばVTuberさんが流行っている背景には、家でひとりでいるときに配信を見て、常に配信を聞いているのが生活の一部となり、心の潤いになっているという人もたくさんいるでしょう。

【横川楓】今のようにデジタルツールが普及する前は、友達同士で会うなど、アクティブに外に出るという選択肢しかほとんどだったのに、現在は娯楽の選択肢としてスマホやパソコンというツールも生まれ、ひとりで何かと向き合う時間が増えたのではないでしょうか。もちろん、お金を使わなくても、好きでいること自体が推し活です。日常的に推しを応援して、たまに行くコンサートやイベントにはお金を使い、そのために仕事を頑張る。そんなふうに推しという存在を日々頑張るための精神的な支えにする人が多いのだと思います。

――コロナ禍を経て、そういった推しへの思いがより強くなったように思います。
【横川楓】コロナ禍ではオンラインライブなどが浸透して、オンラインで楽しめることが増えました。また、SNSでも日常的に情報を得られるので、推しはまさに生活の一部。もっと応援するために、よりお金を使う人も増えたと感じます。

――人生を豊かにするためのお金の使い方とは?横川さんの考えを教えてください。
【横川楓】「推しは推せるときに推せ」と言われるぐらい、推し活は今が大切。推し活のほかに資格や買い物など、今でないと意味がないものって結構あります。将来ももちろん大事ですが、今を楽しむ感覚も持ちながらお金を使うことで、人生が豊かになるのではないでしょうか。

この記事のひときわ#やくにたつ
・推し活の「マネースケジュール」を立てる
・予定外の出費があったら、ほかのところで節約してバランスをとる
・「今」と「将来」の両方を意識してお金を使う

取材=浅野祐介、撮影=樋口涼