これまで何度もお金を貯めようとしてきたのに、結局貯められなかった――。そんな人は、お金を貯めるために絶対に欠かせないことをしてこなかったのかもしれない。その不可欠のこととは「家計管理」だと語るのは、主婦投資家として投資やお金についての情報を発信している「りりな」さん。りりなさんの考える家計管理の基本を教えてもらった。
■結婚を機にお金の勉強をはじめ、主婦投資家に
今でこそお金や投資の情報を発信していますが、以前の私はお金についてまったくうとい人間でした。結婚前は、のちに夫になる彼氏も私も各々が好き勝手にお金を使っていたのです。

でも、結婚すると、「このままで大丈夫かな?」といった漠然とした不安を感じるようになりました。子どもをどう育てるのか、家はどうするのかといったことを考えるうち、「このままなにも考えない状態はまずいぞ……」と思い、お金について学びはじめたのです。

勉強に使ったのは、主に雑誌の『日経ウーマン』です。もともとは仕事のスキルアップのために読んでいたのですが、マネー関連の記事もあり、当時組まれていたのが「つみたてNISA・iDeCo特集」でした。それを読んで投資について学ぶようになりました。

また、『日経ウーマン』にはマネーセミナーの広告も掲載されていました。それらを見て、家計管理や資産運用など、自分の興味があるマネーセミナーに参加して勉強したという流れです。

そうしてまずは家計を見直し、続いてつみたてNISAから資産運用をスタート。少しずつ投資の知識と経験を積み重ねながら、結婚5年目で総資産は3000万円を突破しました。

■収入を増やすより、支出を減らすことをまず考える
これまでの私の経験を振り返ると、「家計管理こそがお金を増やす第一歩」だったと感じています。

投資によって資産運用してお金を増やすには、当然のことですが元手が絶対に必要になります。では、その元手をどのように捻出すればいいのか?とにかく働いて収入を増やすというのもひとつの手でしょう。

しかし、物価はぐんぐん上がっていく一方で、給料はそれほど簡単に上がるものではありません。もちろん給与体系にもよるところですが、収入を増やすためにしっかりと成果を挙げたとしても、それがすぐに給料アップというかたちにつながらないというケースも多いのではないでしょうか。

しかも、仮に大きく収入を増やせたとしても、同時に支出も増えてしまっては意味がありません。結婚前の私ではありませんが、「家計管理をする」という意識が抜け落ちていてあればあるだけお金を使うような人の場合、収入が増えればそれだけ支出も増えやすいはずです。

そう考えると、収入を増やすことももちろん大切ですが、それ以上に無駄な支出を削ることが重要なポイントとなります。家計管理によって家計を見直し、お金を使い過ぎている費目があれば削減していくのです。そうすることが、収入を増やそうとすることよりも即効性があるのだと私は考えています。

■3ステップで進める家計管理
家計管理は、具体的には以下のような3つのステップで進めます。

【家計管理の3ステップ】
①まずは現状把握
②家計の見直しをする
③お金の流れを整える

最初のステップは「①まずは現状把握」です。みなさんは、毎月、自分がなににいくら使っているのか把握できているでしょうか。それが見えないことには、家計を管理することはできません。ですから、まずは家計簿をつけてみましょう。家計簿アプリを使って自分の家計を「見える化」するのです。

もちろん、家計簿をつけただけで満足してしまっては意味がありません。まずは1カ月のあいだ、家計簿をつけてみる。そうして1カ月が過ぎたら、きちんと振り返り、「②家計の見直しをする」のです。

「こんなところにこんなにお金を使っていたのか」と自分でびっくりすることもあるはずです。もちろん、それらは支出を削っていく対象となります。まだ大手キャリアに高額のスマホ料金を払っている人なら、同じキャリアでも低料金のプランにしたり、MVNOと呼ばれる格安の業者に乗り換えたりするのも手でしょう。

私の場合、保険料も見直したもののひとつです。「日本人は保険に加入し過ぎている」ともいわれますが、私たち夫婦もまさにそれにあてはまっていたのです。夫名義で入っていた個人年金保険は、つみたてNISAと比較をした結果、自分で運用をしたほうが増えると判断し、解約すると元本割れする状態でしたが、思い切って解約をしました。私名義で入っていたドル建て保険は払い済みにしました。なお、今は、円安ドル高の影響で思ったよりも早く元本割れを回避できたのでずっと払い済みにしていましたが、解約しました。

■3つの口座を持ち、「強制貯蓄」の仕組みをつくる
そうして家計の見直しをしたら、「③お金の流れを整える」に進みます。これは、具体的には先取りで「貯めるお金」「増やすお金」に分けることを意味します。

「貯めるお金」というのは、現金で確保しておくお金(生活防衛資金)や財形貯蓄といった、必要になったらいつでも引き出して使えるお金のこと。一方の「増やすお金」は、投資資金のことです。

これらについては、給料から生活費やお小遣いなどを引いたあと、余ったお金から捻出しようと考えがちです。でも、そのように手元にお金があると「つい使い過ぎてしまう」ということが続き、結局「貯めるお金」「増やすお金」にお金をまわすことができなくなるのです。おそらく、これまでお金を貯められなかったという人の多くが、このケースにあてはまっていると思います。

そこで、給料が入ったら「貯めるお金」「増やすお金」に先にまわしてしまいましょう。そのためには、「使う口座」「貯める口座」「増やす口座」の3つの口座を持ちます。そして、自動送金サービスを使って、給料が「使う口座」に振り込まれたら、決まった額のお金を自分の意志とは関係なく「貯める口座」「増やす口座」に送金されるようにする。いわば、強制貯蓄するのです。

そうすれば、「使う口座」に残ったお金でやりくりせざるを得なくなりますから、これまでお金を貯められなかった面倒くさがりの人でも、「つい使い過ぎてしまう」ことがなくなり、お金を貯められるようになるのです。

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹