元結合双生児“ベトちゃんドクちゃん”の弟グエン・ドク氏(42)の半生を追ったドキュメンタリー映画『ドクちゃん ―フジとサクラにつなぐ愛―』(5月3日公開)の来日特別試写会が11日、東京・日本赤十字看護大学内広尾ホールで行われ、ドク氏と川畑耕平監督が登壇した。

 日越外交関係樹立50周年と分離手術35年を記念して制作された本作。今も深刻な健康問題を抱えながら、平和のアンバサダーとしての使命とともに生きるドク氏の姿が収められている。プロデューサーはドク氏とともに平和活動を長年続けているリントン貴絵ルース氏が担い、監督はドキュメンタリー作家の川畑耕平が務めた。

 ドク氏は、1986年に兄のベトさんが「急性脳症」と診断されたことで、ドク氏も命を失いかねない状況となり、ホーチミンから緊急来日し、東京・広尾の日本赤十字社医療センターで約4ヶ月におよぶ入院生活を送った。さらに、日本赤十字社などからの支援で1988年の分離手術が実現したことから、今回の試写会が実現。同大学で学ぶ学生を招き、トークを行った。

 本作で伝えたかったことを問われると、ドク氏は「1つ目は、今の私の姿をありのまま見ていただきたいということ」と言い、「私のことは多くの本や映像で20年くらい報道され続けてきましたが、自分でも『あれはどうなんだろう』と思ったこともありました」と苦言を呈しつつ、「この映画を通して、私の姿を正しく見ていただきたい」と訴えた。

 続けて、「2つ目は平和のありがたさです。私自身、戦争が残す苦しみというものを感じてまいりましたので、それをみなさんに伝えたい。そして、もう二度と戦争を起こすまいという気持ちを持っていただき、それを広めてほしい」と呼びかけた。

 ドク氏は、兄のベトさん(享年26歳)と07年に死別。ドク氏は今年で42歳を迎え、現在は結婚17年目を迎える妻のトゥエンさんの夫であり、双子のサクラちゃんとフジくんの父であり、そしてホーチミン市内の病院に勤務する医療従事者でもある。

 この日は医療や看護の道を目指す学生に向けて、「私自身も医療の現場というものを体験しています。今後活躍されると思いますが、患者さんというのはそれぞれに困難を抱えているわけですから、1人ひとりにどれだけ寄り添えるかが重要です。“患者さんのために”を共通の課題として、ともにがんばりましょう」とエールも送った。