ジャズ界の女性トップミュージシャンが集結したバンド「THE JAZZ AVENGERS(ザ・ジャズアベンジャーズ)」が、5月8日にセカンドアルバム「8 STEPS」(エレックレコード)をリリースしました。4人のサックスプレーヤーが前面に立つ異色の演奏スタイルで煌びやかなサウンドを響かせ、注目を集める8人組です。リーダーでドラマーの川口千里さんに、バンドにかける思いなどを聞きました。

メンバーは、川口さん、米澤美玖さん(テナーサックス)、寺地美穂さん(アルトサックス)、WaKaNaさん(同)、中園亜美さん(ソプラノサックス)、瀬川千鶴さん(ギター)、竹田麻里絵さん(キーボード)、芹田珠奈さん(ベース)の8人。昨年4月にリリースしたデビューアルバム「THE JAZZ AVENGERS」に続く新作は、アナログシンセサイザーを生かした軽快なサウンドが印象的な表題曲「8 STEPS」をはじめ、ガールズトークをイメージした4ビートサウンドが小気味よい「Anony(アノニー)」、サックス4管が奏でるイントロで始まるファンキーなナンバー「As You Like(アズ・ユー・ライク)」、J-POPの要素を取り入れたバラード「cradle(クレードル)」など計10曲を収録。いずれもメンバーによる書き下ろしの曲となっています。

「ファーストアルバムをリリースした後、ツアーで全国を回ったのですが、各地で演奏を重ねていくなかで、メンバーそれぞれの新たな一面を発見できたし、お互いの理解が深まり、団結力も増しました。そうしたことがサウンドの仕上がりにも表れました」と川口さんは話します。サックス4管という編成ならではのゴージャスで一体感あふれるサウンドは、新作でさらに磨きがかかったよう。アルバムタイトルの「8 STEPS」は、「8人全員が足並みをそろえ、団結して作ったアルバム」という意味を込めてつけたといいます。

川口さんらがバンドを結成したきっかけは、2021年の夏、世界各国の次世代リーダーが集う国際会議がドイツで開かれ、その閉会式で、日本の若手女性ミュージシャンを集めてパフォーマンスを披露してほしいという依頼を受けたことでした。川口さんと主催者側がそれぞれ人選をした結果、集まったのが現在の8人。「日本には素晴らしい女性サックスプレーヤーがいっぱいいるので、おのずとサックスが4人も選ばれることになりました。当初は、トランペット、トロンボーン、サックスという、よくあるブラスセッションをイメージしていたのですが、サックス4管のバンドなんてあまりないし、どんなサウンドになるのか、すごく興味が湧いてきて、『じゃあ、この8人でいこう』と」

ところが、当時はコロナ禍で、ドイツに渡航することができなくなり、代わりに東京でドキュメンタリー映画を撮影することに。「実際にセッションしてみたら、すごく楽しかったし、めちゃくちゃマッチした」(川口さん)という8人は、映画を撮り終えた後もライブを開催するなどして関係を深めていきます。そして、ドイツで1度限りの演奏をするはずだった即席バンドは、そのまま8人で活動を継続することを決めました。

バンド名は、スーパーヒーローたちが活躍する米映画「アベンジャーズ」から。「全員が主役になれる実力を持ったプレーヤー」(川口さん)というメンバーの一人一人を「ヒーロー」に見たてたのです。

3月にギターの瀬川千鶴さんがファーストアルバムを、4月にはソプラノサックスの中園亜美さんがサードアルバムをリリースするなど、“ヒーロー”たちはソロ活動も積極的に展開しています。「みんなソロ活動をしているので、音楽的にも精神的にも自立しているし、自分のサウンドに自信を持っている。そんなメンバーが集まるからこそ、バンドの団結力が確立されると思うので、これからもソロ活動を続けていってほしい」と川口さんは力を込めて語ります。

結成4年目に入った今の目標は「時代を表現できるバンド」になること。「将来、『あの時代に、ジャズアベンジャーズのサウンドがあった』と言われるようになればいいですね。それに、歌のないジャズバンドなので、海外にも進出したいです。今、日本の音楽も世界で注目されているので、『日本でこのジャンルだったら、ジャズアベンジャーズだね』と言われるくらい大きなバンドになれたら」

(読売新聞メディア局 田中昌義)