猫を飼っている人の中には、「いつもお風呂を嫌がる」「毎回シャンプーするのに苦労する」という経験がある人もいるのではないでしょうか。お風呂に抵抗がない猫もいるとは思いますが、多くの猫は「お風呂嫌い」「水に濡れるのが苦手」なようで、暴れたり逃げ出したりしてしまう猫もいるようです。

 なぜ、猫は「お風呂嫌い」であることが多いのでしょうか。ますだ動物クリニック(静岡県島田市)院長で獣医師の増田国充さんに聞きました。

「水浴び」に恐怖?

Q.猫はどうして「お風呂嫌い」であることが多いのですか。

増田さん「猫がお風呂嫌いであることは、そのルーツをたどることで理由が分かるところがあります。

猫の祖先はリビアヤマネコといい、砂漠といった乾燥地帯に生息していました。そもそも水が潤沢にある地域ではなく、水浴びをする習慣が備わっていないのではないかといわれています。その上、砂漠地帯は朝晩の寒暖差が激しいため、被毛が湿っていると夜間の急激な寒さで体温を奪われかねません。そのようなことから、もともと水と触れる機会が少ないため、水浴びという経験に恐怖を覚えてしまうことが考えられます。

ただ、中には水がそれほど苦手ではない猫もいるようで、ターキッシュ・バンは別名『スイミングキャット』と呼ばれることもあり、水辺を泳ぐ姿を動画サイトで見ることができます。トルコの水辺が原産という起源をもち、毛の質も、水に濡れても乾きやすい特徴があります。とはいっても、中には水が苦手な子もいるらしいですね」

Q.お風呂嫌いな猫をお風呂に入れるとき、どんなことに気を付けるとよいですか。

増田さん「先ほど、『猫は水と接する経験が少ないためにお風呂を嫌がる』と説明しましたが、同時に猫自身が自由主義者なので、誰かの都合に合わせて触れられること自体も好ましく思わないことがあるかもしれません。そのため、猫にとってお風呂に入れられることは、私たちの想像以上に恐怖や不安を感じてしまうのかもしれません。

基本的には犬と異なり、頻繁にお風呂に入れなくてはいけないものではありませんから、被毛や皮膚に明らかな汚れが見られるような際に、お風呂に入れる必要が生じる可能性があります。そもそも、猫にとってお風呂は精神的にストレスになりやすいということ、そして、猫の被毛は非常に密であるため、しっかり乾かさなければいけない点が注意すべきところです。

また、お風呂の際は猫の様子をしっかりと観察しましょう。猫に過剰な負担をかけると、猫だけでなく、おうちの人のケガにつながる場合もあります」

Q.飼い猫のお風呂(シャンプー)の理想的な頻度は。

増田さん「猫は元来きれい好きで、毛づくろいを適宜行いながら身だしなみを整えています。そのため、先述した通り、犬のように頻繁にシャンプーをしなくてもよいことが多いです。

猫の場合、長毛種で1〜2カ月に1回、短毛種で3〜6カ月に1回程度が目安といわれます。シャンプー前にしっかりとブラシをかけておくことで、シャンプー後の毛玉予防につながります。

なお、皮膚のトラブルや心因的な原因で、過剰に毛づくろいをすることがあります。何らかの原因があると思われるので、毛玉の有無や皮膚の具合を観察してみましょう。異常があれば、かかりつけの獣医師に相談してみてください」