昨今少子高齢化により、中小企業や小規模事業者の後継者不足などが大きな経営課題のひとつとなっています。承継する人がいない場合は廃業するしかないと考える経営者もいます。 CBCラジオ『北野誠のズバリ』のコーナー「カイシャのシュウカツ」では、事業承継について、専門家をゲストに多方面から学びます。 4月3日の放送では、関西にあるスニーカーの小売店の承継事例を北野誠と松岡亜矢子が、三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援・はじめ部長の藤原秀人さんに伺いました。

     

二足の草鞋を履く会長

今回藤原さんが紹介したのは、関⻄エリアでスニーカーの小売店を運営する会社の承継事例です。

藤原「店舗は(関西エリアで)3店舗経営されていて、業歴50年を超える老舗で最盛期は15億円くらい売り上げていた。従業員は15名くらいの会社」

現在の売り上げは3億円くらいだそうです。

北野「会社の代表はどんな方?」

藤原「2人の代表をとられていて、今回譲渡されたのは会長」

会長は父親から事業承継し、スニーカー小売事業と税理士法人代表の二足の草鞋を履いて事業を行っていました。

北野「ちょっと変わっていますね。普通税理士法人だとそのままやけどね。でもお父さんだから継がなくちゃいけない」

コロナ禍の事業承継は難しい?

なぜ小売業を譲渡することになったのでしょう?

藤原「税理士業務が忙しくなって、両立がそろそろ困難だと」

もう一つの理由は新型コロナ禍の影響とのこと。
実は3期連続赤字になり財務状況が悪化していました。そこで、より資本力のある会社に譲渡することを決意したそうです。

北野「3期連続赤字って結構赤字だから…」

それもコロナ禍の譲渡なので、北野は「買い手がいないんじゃないか」と懸念します。

藤原「まさしく1年以上見つからない。当社との経営承継支援も切れるという時に、1社だけ興味がある人が、たまたま見つかった」

その1社が今回の買い手になりました。

買い手が感じた3つの魅力

買い手となったのはどのような会社なのでしょう?

藤原「こちらも関西で製造卸業をされている会社さんで年商は10億円くらい。ケミカル系のシューズや婦人向けのシューズ、カバンなどを製造してる」

この企業が売り手に魅力を感じたのは3つの理由があったとか。

まず50年という業歴があるので、スニーカー業界では老舗として有名であったこと。

二つめは、小売りを手掛けてなかった買い手にとって、売り手に取引先があり百貨店にも入っていたこと。

三つめは、売り手に「新しいことにチャレンジする」という企業文化があったこと。
売り手はネット通販を先駆けて始めていて技術者も育て、なおかつ自社ブランドの鞄の販売等も展開していました。

藤原「とんとん拍子に進んで半年で契約が完了しました」

赤字でも事業承継はできる

北野「買う方も前向きにやってくれたからですよね?」

藤原「『新しいことにチャレンジする』という企業文化を、買い手社長が『面白い』と終始興味を持っていたと聞いています」

北野「これで(売り手の)会長さんも肩の荷おりますよね。コロナや3期連続で赤字なんて胃が痛いですから」

ここまで言って、ハッと気づいた北野。

北野「赤字だからってM&Aができないなんて諦めるのは違う?」

売り手の赤字はコロナ禍という外的要因でしたが、藤原さんによれば、譲渡後にコロナ感染症の5類移行などがあり、売り上げが一気に上がったそうです。

北野「(買い手には)いいタイミング?」

藤沢「ある意味、安く買えたという」

北野「これは両方が幸せになったパターンだね」
(野村)