「物流の2024年問題」についてです。物流を支えるトラックドライバーの時間外労働が制限され、労働環境の改善が求められています。西日本の大動脈、山陽自動車道のパーキングエリアで取材をして見えてきたのは、“休憩したいけど、停められない” という現状です。

若手トラックドライバーに話を聞く
広島市安佐南区にある沼田パーキングエリアで、トラックが好きで運転手になったという25歳の 福本修哉 さんに出会いました。

福本修哉さん
「ハンドルカバーは ”華恋” といって金華山の生地にあわせて買って、ダッシュマットも今度また付けようかなと。ぼく、TikTokをやっていて、たまに声をかけられたりして、やっぱトラックかっこいいですねとか言われたらちょっとうれしいかなと思いながらいつもやってますね」

動画投稿アプリTikTokに、会社に許可を取ってトラックや譲り合いの車窓動画などを上げています。TikTokのつながりで、トラックドライバー同士での交流の輪を広げています。

Q. そういう横のつながりとかあると楽しいですか?
「楽しいです。やっぱり、いろんな会社とかの情報とかも聞けるから、わからないときとかも助かる」

そんな福本さん。4月の法改正で変わったことはあったのでしょうか。

「休憩時間とかもだし、そのあと、積み込みとかも、前まで積み込みまでに3時間待機とか、あと荷物が決まってないから、とりあえず待機というのがあったんですけど、最近、4月になってから大概はすぐに積めていますね」

時間外労働に上限ができたことから、荷主側の意識も徐々に変わりつつあるようです。

RCC

新潟から福岡まで菓子を運ぶドライバー「休みは増えたけど…」
「休みが増えました」と語るドライバーは、これまでほぼ休みなく荷物を運ぶことが多かったそうです。

「うれしいのかどうかって、まだわからないのは本音です。結局、今月から始まっているので、給料面でどうなるのかっていうのはまだちょっと見当がつかないもので。走った回数が今までの給料だったので、それが走る回数が減るってなったときにどうなるのかはちょっとわからないですね」

休みが増える分、収入に不安が残ります。

RCC

兵庫から福岡まで食品を運ぶドライバー「停める場所が…」
「昔の話なんですけど、ひどいときには年に2〜3回しか家に帰っていなかった。いまは週に2回くらいは家に戻ります」と語るのは、ドライバー歴25年の大ベテラン。収入の不安もありますが、さらに困っていることがあるといいます。

「なかなか、もうぽっと停められる場所がない。だから(PAに)入ってみてダメだったら、また出ていくみたいな感じですね」

RCC

トラックドライバーが守らなければならない “ヨンサンマル” とは
トラックなどの運転手は、連続で運転できる時間に上限が定められています。4時間運転するごとに30分の休憩が必要なことから業界では ”ヨンサンマル” と呼ばれています。

「4時間に30分休憩取るために、駐車マスに空きがなければ出て、また次のパーキング目指して入っていって、止まれるか止まれないか模索するしかないので」

休まなければいけないのに、休む場所がない…。切実な悩みです。

ところで 沼田PAにトラックドライバーが集うワケとは?
福本さんは、なぜ沼田パーキングエリアでの休憩を選んだのでしょうか。尋ねてみると理由が見えてきました。

「大阪からここまでちょうど4時間ちょいぐらいで行ける距離なので」

天下の台所・大阪と、海外貿易の拠点・下関や九州最大の都市・福岡とのほぼ中間に位置する沼田パーキングエリアはドライバーに人気のスポットだといいます。4時間走ると、必ず30分以上の休憩が必要となるトラックドライバー。

沼田パーキングエリアはちょうど、大阪からも福岡からもおよそ4時間でたどり着けるため、トラックドライバーが休憩や仮眠をとるのにちょうどいいというわけです。

ほかのパーキングエリアやサービスエリアでも、大型車の駐車スペースが混雑していますが、NEXCO西日本では1台でも多くの大型車が駐車できるよう普通車は小型の駐車枠に停めるよう呼びかけています。

RCC

トラックが停められるかは運次第?
「やっぱりコンビニとかあるパーキングは特にもうパンパンになりますね。基本、この時間(夕方5時頃)っていつもここのパーキング、ガラガラなんですよ。最近、夕方ぐらいから止まるトラックが増えてきたなっていうのはありますね」

休息時間が伸びたことで、トラックが停まる時間も伸びてきているのでしょうか。取材した4月24日も夕方の時点ですでに満車。2台が連続で停められずにパーキングエリアを去ったタイミングで、ちょうど休憩を終えた1台が出発。運良く空いた1台分もすぐに埋まるという具合で、駐車スペースに停められるかは、”運次第” という状態です。中にはゼブラゾーンや高速バスの停留所に駐車する車両もいました。

RCC

あふれるトラック 対応策は?
通販サイトの充実による取引の多様化などで輸送量が増加していることが一因といわれています。常態化している混雑に対応するため、NEXCO西日本は、新たな取り組みを始めています。

新たな取り組みの一つは、”短時間限定駐車マス” というものです。停めることができない大型車を減らすために、60分以内の利用に限定して駐車が可能な、”短時間限定駐車マス” を一部のサービスエリアに整備。特に深夜帯の混雑が激しい福山サービスエリアの下り線では、去年12月から実証実験を続けています。

同じような実験が行われている静岡県の足柄サービスエリアでは、1日の1マスあたりの駐車台数が実験前は6.6台でしたが、実験後は7.7台に増加したということです。回転率を上げて、休憩を取ることのできるドライバーを増やそうとしています。

NEXCO西日本 吉川貴信 さん
「4時間走ると30分休憩しないと、というところにも抵触しますので、やっぱり必ず確実に停まれるような環境は作っていきたいなと思っております」

NEXCO 3社では、ほかにも全国のサービスエリアで駐車場のレイアウトを変更し、大型車のマスを増やすなどの取り組みが行われています。

RCC

休憩を終えた福本さんが出発
午前4時半。沼田パーキングエリアで福本さんの一日が始まります。

Q.眠れましたか?
「めちゃ眠れました」

Q.きょうはどういう予定ですか?
「いまから朝、とりあえず下関で下ろして、お昼から山口の周南市まで回送して積み込み。そのあと滋賀の甲賀市に行きますね。だんだん明るくなっていく感じの時間が好きです」

夜明けの高速道路へ荷物を届けに動きだします。トラックドライバーは、きょうもわたしたちの生活を支えるために走り続けています。

RCC

あらためて 2024年問題とは?
トラックドライバーの時間外労働が、4月から年間で960時間に制限されます。また、勤務と勤務の間の休息時間が、これまでの最低8時間から最低9時間に伸びます。これによって、トラックドライバーの働き方を改革しようというものですが、収入が減ったり、荷物の総輸送量が減ったりする心配があります。