2024年2月29日、シンガポールメディア・聯合早報は、米アップルが電気自動車(EV)開発を断念したと報じられたことに対する中国企業の反応を紹介する記事を掲載した。

記事は、ここ数日で複数メディアによって「アップルが10年に及ぶ自社EV開発の努力を終え、資金を人工知能(AI)へと投じている」と報じられたことを紹介。アップルから正式な発表は出ていないものの、中国のEV関連企業が次々とコメントを出していると伝えた。

そして、小米(シャオミ)の雷軍(レイ・ジュン)CEOが2月28日にSNS上で「このニュースを見て、非常に驚いている。アップルが自動車作りから撤退するということなので、アップルユーザーがスマートEVを買う際には小米SU7がベストチョイスになる」と、自社の宣伝を含めたコメントを残したことを紹介した。

また、理想記者の李想(リー・シアン)CEOも「アップルが自動車製造から撤退し、AIに集中するのは、絶対的に正しい戦略上の選択だ。タイミング的にも合理的。自動車で成功すれば市場価値が2兆ドル(約300兆円)増えるが、そのためにはAIが必須条件になる。AIこそが決戦の場なのだ」とし、小鵬汽車の何小鵬(ホー・シアオパン)董事長も「今年以降の10年間はEV業界で生き残り戦が繰り広げられると見ているが、まさかアップルが現時点でこのようなカードを切るとは思っていなかった」と感想を述べたことを伝えた。

記事は、アップルのEV撤退報道について米ブルームバーグが「米テスラなどの自動車メーカーはほっと一息ついているだろう。EV市場鈍化の下で繰り広げられる競争の脅威が低減するほか、優秀なエンジニアがアップルからEV市場に流出する可能性があるからだ」と評したことを紹介した。

その上で、EV分野の競争が白熱化していることは事実で、中国のEV市場も数年続いた急成長が一段落して鈍化し始めており、厳しい状況の中で実力の弱い企業が生きていけなくなる可能性が高いと指摘。一方で「アップルはEV技術ですでに多くの特許を取得しており、撤退によってこれまでの投資が水の泡になるわけではない。むしろ、中国のEV市場にとっては一石を投じる行動と言える。もし中国企業がアップルの動きに追随して多くのリソースをAIの発展に投入し、EVに関連するAI技術を掌握し、発展させることができれば、将来業界から淘汰される心配はなくなるかもしれない」と評している。(翻訳・編集/川尻)