独メディアのドイチェ・ヴェレ(中国語版)は5日、「中国の経済成長目標と軍事費の増加幅をどう読み解くか」との記事を掲載した。

同日に北京で開幕した全国人民代表大会(全人代)で、今年の経済成長率(GDP成長率)目標が「5%前後」に設定された。李強(リー・チアン)首相は「今年の目標達成は決して容易なことではない」との考えを示し、「高品質の発展」などを推し進める考えを示した。

記事は「今年の目標は昨年と同様で多くの海外専門家の予想と一致した。ただ、投資家はこの目標に触発されていない」とし、同日午前の香港ハンセン中国企業指数が2.6%と約1カ月ぶりに最大の下落率を記録したことに言及。「投資家はより強力な財政政策を望んでいたため、全人代初日に対する市場の失望感の表れとの分析が出ている」と伝えた。

また、中国政府の「工作任務」の部分で、「科学技術革新による産業革新の推進」「産業チェーンとサプライチェーンのアップデート」「新興産業の育成」「デジタル経済の推進」などの方針が示されたことを挙げ、「米国が中国に対する科学技術輸出の制限を拡大するにつれ、中国は自国の科学技術の自主性を実現し、国外のサプライヤーへの依存度を下げることを目指している」と指摘した。

さらに、「最も注目を集めていること」として、李首相が今年から数年連続で発行すると発表した「超長期特別国債」に言及。「今年はまず1兆元(約21兆円)を発行し、その目的は強国建設、民族復興を進めるための一部重大プロジェクトの資金問題を解決するため」と説明し、「この特別国債は赤字に加算されず、市場と経済状况に応じて適切なタイミングで発行されるもの」との専門家の解説を紹介した。

一方、中国の今年の国防費(軍事費)が前年比7.2%増と前年と同水準の増加幅になったことについて、記事は背景に台湾問題があると指摘。ロイター通信の「今年は台湾への姿勢がより強硬になり、『平和統一』という言葉が省かれた。これは初めてのことではないが、用語の変更は台湾に対する立場に変化が起こる可能性を示す兆候とみられている」との報道を取り上げた。

このほか、アトランティック・カウンシルの宋文笛(ソン・ウェンディー)氏が「中国政府の姿勢は『適度な強硬』であり、台湾に対してより強硬になることと、台湾との国際的な盟友関係の安定との間でバランスを取っている」との見方を示したこと、シンガポール南洋理工大学の李明江(リー・ミンジアン)氏が「経済問題が厳しくても、中国にとって台湾問題は国防支出の重要な要素。戦争するほかに選択肢がない場合は、戦争に勝つ準備をしなければならない」と述べたことを伝えている。(翻訳・編集/北田)