Stephanie Kelly

[ニューヨーク 3日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)業界は2024年の米大統領・議会選に多額の資金を投じ、業界寄りの候補者を支援したり、規制強化を唱える候補者の追い落としを図ったりしている。仮想通貨は年初から相場が急上昇しており、米政界でも影響力が復活しつつあることが読み取れる。

仮想通貨業界は予備選と党員集会が集中する5日の「スーパーチューズデー」に向け、カリフォルニア、アラバマ、テキサスの各州で多額を投じている。

ロイターの分析によると、仮想通貨交換業大手コインベースと、同業ジェミナイの共同創業者であるウィンクルボス兄弟の支援を受けているスーパー政治活動委員会(PAC)、「フェアシェイク」、「プロテクト・プログレス」、「ディフェンド・アメリカン・ジョブズ」はスーパーチューズデーに少なくとも1300万ドルを投入した。

関係者によるとこれはほんの手始めに過ぎない。

フェアシェイクの広報担当、ジョシュ・ブラスト氏は「仮想通貨業界は勝利のため政治的に動いている。われわれの課題やビジョンに沿った候補者の後ろ盾として影響力とインパクトを持つことになるだろう」と述べた。

連邦選挙委員会の集計によると、フェアシェイクなど仮想通貨業界の支援を受ける3つのスーパーPACは23年1月から24年1月までの調達額が合計で約1億0200万ドルに達した。

仮想通貨はこの数カ月で急回復。代表的な仮想通貨のビットコインは22年に大手数社の破綻を受けて価格が暴落し、規制強化に直面したが、先週には最高値を更新した。

米調査サイト、オープンシークレッツのデータによると、仮想通貨業界は従業員やPAC経由を含めた今年の選挙戦での寄付が約5920万ドルとなり、22年中間選挙の2680万ドル、20年の大統領選の160万ドルを上回っている。 

フェアシェイクはカリフォルニア州で上院選に立候補している、仮想通貨に慎重な立場の民主党議員ケイティ・ポーター氏を標的に、同氏を支持しないよう呼びかける運動を展開。メディア対策を含めこれまでに1000万ドル余りを費やしている。

アラバマ州ではプロテクト・プログレスが、仮想通貨業界寄りの立場を取り下院選に出馬している民主党のショマリ・フィギュアーズ氏の支援に約170万ドルを投じた。フィギュアーズ氏は当選したあかつきには「暗号通貨などデジタル資産を巡る新しい状況を受け入れ、革新と技術進歩を後押しする」と言明している。

プロテクト・プログレスはテキサス州でも下院選に出馬する民主党のジュリー・ジョンソン議員に対して約96万2000ドルを支援した。

オープンシークレットのデータによると、ディフェンド・アメリカン・ジョブズはノースカロライナ州で共和党候補2人の支援に100万ドル余りを投じている。

コインベースの米国政策責任者、カーラ・カルバート氏は「これらの選挙戦には、デジタル資産について学び、考えることに前向きであるだけでなく、実際に議会や政策立案者に対して行動を起こすよう呼びかけている候補者が参加している」と述べた。

コインベースは「スタンド・ウィズ・クリプト・アライアンス」と呼ばれる非営利団体の後ろ盾でもある。この団体は仮想通貨を保有する有権者を組織化し、世論に影響を与えることを目指しており、現在のメンバー数は31万5000人。

仮想通貨業界は、仮想通貨交換業大手の米FTXトレーディングの創業者兼最高経営責任者(CEO)のサム・バンクマンフリード元被告が昨年、詐欺罪で有罪判決を受けた。検察は同氏が詐取した資金から1億ドル余りを政治活動に寄付したと主張。情報開示によると、バンクマンフリード元被告はおよそ4000万ドルを、主に民主党支持の団体や活動に寄付していた。