Howard Schneider

[ワシントン 16日 ロイター] - 先進各国は今のところ、新型コロナウイルスのパンデミックに起因するインフレが賃金と物価の連鎖的上昇に発展する展開を回避できているが、一部の国ではインフレ退治の最終段階に伴う不確定要素が残っている──。元米連邦準備理事会(FRB)議長のベン・バーナンキ氏と、元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏が共同執筆した最新論文で、こうした見解が示された。

論文は、ブランシャール氏が上席研究員を務めるピーターソン国際経済研究所が16日に公表した。

特に米国について両氏は、生産性の向上と物価上昇率の下振れが続いているので、FRBが2%の物価目標を達成するのと引き換えに失業率上昇が全く求められないかもしれないと述べた。

ブランシャール氏は2022年7月、元米財務長官のローレンス・サマーズ氏とともに、失業率を上昇させずにインフレを抑える「魔法の手段」はないと主張していたが、これまでは「その間違いが証明されつつある」という。

両氏は先進国全体に関しても、賃金と物価が相互にもつれ合って上昇する兆しは乏しいと指摘。そうした現象が実際に発生し、また中央銀行の物価安定維持を巡る信認が今よりも低かった1970年代よりも、今回はインフレを抑制しやすい環境になっていると付け加えた。

具体的には、エネルギーと食品の一時的高騰が収まった後で、人々の予想物価や賃金要求に持続的な上昇圧力がほとんど残らなかったとしている。

ただ賃金上昇が物価全般に波及するスピードは非常にゆっくりで、その影響浸透には時間がかかるので、まだ顕現化していない可能性もあると警告。「一部の国は物価目標達成のために労働市場の需給をある程度緩ませる必要があるかもしれない」と述べた。