Samia Nakhoul Pesha Magid

[ドバイ/リヤド 14日 ロイター] - 関係筋によると、イランがイスラエルに対する報復に踏み切ったことを受けて、湾岸諸国は本格的な戦争突入を阻止するために動き出している。エスカレートすれば自国が対立の最前線に立たされることになり、これまで醸成してきた域内の融和の動きが台無しになる可能性がある。

特にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、イラン、イスラエル、そして米国の間を取り持つのに好都合かもしれない。サウジとUAEは近年、これら3カ国と外交関係改善を進めてきたからだ。

米国の同盟国である湾岸諸国は、イランやイスラエルとの関係を安定させることで、長年の安全保障上の懸念を解消し、それぞれ自国の国家プロジェクトに集中できるように努めてきた。

UAEとバーレーンは2020年にイスラエルとの国交正常化協定に調印。サウジは今回のガザ紛争で外交が停滞するまでは、米国との防衛協定とセットにする形でイスラエルとの正常化を模索していたほか、昨年は長年にわたる確執の末、イランとの関係改善に踏み出した。

しかし、イランが支援するイスラム組織ハマスがイスラエルを突如襲撃した昨年10月7日以降、地域全体の平和が脅かされており、これまで進めてきた緊張緩和政策は今、過去最大の脅威に直面している。

<飛び火警戒>

イスラエルとイランの間で直接戦争が起これば、両国の間に領空を持ち、同盟国イスラエルを守ると宣言している米国の軍事基地を抱える湾岸諸国に飛び火する可能性がある。

政府の内部に詳しいある湾岸筋は「誰もエスカレートは望んでいない。誰もが事態の収束を望んでいる」とし、水面下で電話外交が活発に行われているはずだと指摘。「圧力はイランだけにかかっているのではない。イスラエルにも反撃しないよう圧力がかかっている」と述べた。

別の湾岸筋によると、湾岸諸国・イラク・ヨルダンは、イランと、イスラエルの主要な支援国である米国の双方にエスカレートしないよう働きかけており、米国は既にイスラエルに自制を促しているという。

また関係筋は、米国は湾岸諸国を介して、イランにこれ以上エスカレートしないようにメッセージを伝えていると指摘。「米国が湾岸アラブの同盟国を使って、イランと米国の間でメッセージを伝達しているのは明らかだ。サウジはイランと連絡を取り合っており、事態を収束させようという合意がある」としている。

一方、これら関係者や湾岸アナリストの間では、最も危険な局面は過ぎたとの見方が主流だ。湾岸研究センターのアブドゥルアジズ・アル・セーガー代表は「イランが一矢報いた」ことでエスカレーションの段階は終わり、米国もイスラエルの強硬な措置を望んでいないと述べた。