ストロークを4mm増やし398.6ccへスケールアップ、フォルムは変わらずに見えるが、各部のほとんどで仕様変更され格段に進化!

ハスクバーナモーターサイクルズのシングルスポーツ、Vitpilen401が大幅な仕様変更で2024年モデルとなった。 試乗して驚いたのが、その400ccシングルとは思えないポテンシャルの高さ。これまでの600ccクラスを思わせる逞しいトルクがグイグイと路面を蹴る醍醐味と、前後とも路面に押し付けられたように感じる高いスタビリティの安定感だ 。

ハンドルがいかにもマニアックだった、左右に振り分けたセパレートハンドルから一般的な1本のパイプハンドルとなったのを確認したくらいで試乗をスタート。ところがいかに認識不足だったかを思い知らされる時間が過ぎていくこととなった。 いやいや、これは事件だといえるオオゴトだ。エンジンから車体にはじまり優れたサスペンションからくるハンドリングに至るまで、すべてにひと段階以上にグレードアップしているではないか。

前方で横へエラが張った特徴的な燃料タンクが同じフォルムなので、一見して大きく違って見えないが、リヤサスペンションがセンターから右横へ位置を変えたのをはじめ、スチールパイプのトレリスフレームが全面刷新、シート高も835→820mmと低くなり、イメージを踏襲している燃料タンクも容量が9.5L→13.0Lと大きくなった。

エンジンはこれまで89×60mmで373ccだったが、今回のモデルチェンジで同じ89mmのボア径ながら、そのストロークを64mmまで増やし398.6ccへと拡大。 これに伴い、最高出力は33 kW(45 PS/8,500 rpmと1.5PSほど向上したが、最大トルクのほうは39 Nm/7,000 rpmへ2Nmもの大幅アップを果たしている。

このパワー特性の違いは明白で、3,000rpmを下回っていても、スロットルを大きくひと捻りすると破裂音のエキゾーストノートと共に、パルシブに爆発を体感させながら路面を蹴りまくる逞しさだ。 それでいて7,000rpmを超える高回転域が、ビッグシングルだと2気筒のようには伸びない感じに陥りがちだったのが皆無という、スムーズにアタマ打ち感なく回っていく。 とはいえ最も醍醐味が溢れるのはコーナリングで、中速域のトルキーなパンチ力が明確なトラクションを楽しませてくれる。 イージーシフトと呼ばれるいわゆるパワーシフトで、スリットルを開けたまま低中速のおいしい回転域だけを繋ぎ、3速→4速→5速とコーナリングのトラクションを途切らない至福のときが、キャリアに関係なく演じられる。 もちろんシフトダウンもただペダルを踏みおろすだけだ。 しかもライドモードが搭載され、StreetとRainが選べるのも、そろそろ反射神経に自信がなくなってきたベテランには有り難いサポートといえる。

サスペンションは前後ともストロークをが伸びていて、たっぷりとした減衰力とのコンビネーションが、軽量な154.5kgの車重にもかかわらず、落ち着いた安定感で600ccクラスを感じさせる。 そしてハンドリングが、速度域で変化しない4気筒クラスのようなスタビリティで、とくにリーンしていく過程で前輪の安心感が大きい。 マフラーがショート化されたり新しいフレームのシートレール部分がアルミだったり、車体のマスの集中化も動きをコンパクトに感じさせて安定感との相乗効果に「本気度」が伝わる。 上半身の角度とシートに座る腰の位置との関係も、前後輪への荷重が変動しにくいコーナリングの安定性へ貢献するライディングポジションだ。 ということで、ワインディングでは従来の単気筒のトルク変動が少ない特性を活かした走り方……といった工夫を必要としない、ある意味マニアックでなくなったが、これを残念と思わせないほどさらに上質なハンドリングによる醍醐味に溢れる乗り味だ。 このポテンシャル……気になる方はぜひ試乗されるべきで、筆舌に尽くせない新次元のスポーツシングルといった新境地を切り開いてみせている。この内容で79万9,000円(税込み)がバーゲンプライスなのは間違いない!

Svaltpilen250の排気量を忘れさせる力強さに感銘!

そして今回は250のSvartpilenにも試乗できた。 こちらも従来のKTM系250単気筒より明確にチカラ強くなっている。 とくに4,000rpm以下という、250ccとしては加速域ではない低回転でも、パルシブな鼓動感とともにシッカリ増速していくのには感動した。

ハンドリングも安定感が大きな、軽量クラスのイメージにはないグレードなのに驚かされる。 これも従来と次元が異なるので、ぜひ試乗して確かめられることをお奨めしたい。 この進化の大きさは、そろそろ性能に期待できなくなった国産を突き放す勢いを感じさせる。 まだまだ詰めてイケる……そんなポテンシャルが堪能できるスポーツ性の高さを実感した2024年モデルだった。