ドジャース大谷翔平(29)の元専属通訳だった水原一平容疑者(39)が罪を逃れるために大谷に口裏合わせの嘘の供述を懇願していたことが明らかになった。ニューヨークタイムズ紙がすべての悪事が明らかになった3月20日の韓国の夜の裏舞台を暴露したもの。水原容疑者は大谷の口座から1600万ドル(約24億5000万円)以上を盗み、違法なスポーツ賭博の借金返済に充てた銀行詐欺罪で訴追され、法執行機関に“自首”、その後、数多くの保釈条件をつけられ、違反した場合に2万5000ドル(約380万円)を支払うという実質“ゼロ円”の署名保証金制度で保釈されている。

 性根まで腐っていたのだろう。
すべての犯行が発覚した3月20日の韓国で水原容疑者が窃盗などの罪を逃れるために最後まで悪事の工作を仕掛けていたことが明らかになった。ニューヨークタイムズ紙が、この夜に起きた内情に詳しい2人の匿名関係者の証言として暴露したもの。
同紙によると、ESPNの取材などで追い詰められた水原氏は、3月20日に韓国ソウルで行われたパドレスとの開幕戦後にクラブハウス内でのミーティングで全選手を前に「私はギャンブル依存症でした」と吐露。「すべての責任は私にある」としたものの「大谷が借金を肩代わりしてくれた」と、ここでも嘘をついた。
3月25日の会見で大谷自身も明かしていたが、水原容疑者の告白のすべてが英語だったため、英語が堪能ではない大谷は完全には理解できなかった。しかし「彼は疑念を抱くのに十分な知識を持っており答えを求めていた」と同紙。大谷は会見でも「なんとなく違和感を感じていた」と語っていた。
大谷は会見で「その時、彼は、僕に対してホテルに帰ったあとで2人でより詳しいことを話したいので今は待ってくれと言っていたので僕はホテルまで待つことにしました」と説明したが、そのより詳細な状況を同紙が明かした。
試合が終わった数時間後の真夜中にチームの宿舎だったソウルのフェアモントアンバサダーホテルの地下にある会議室で大谷と水原容疑者は1対1で対峙した。水原容疑者は「違法なブックメーカーに莫大な借金を背負い、その返済のために大谷の口座からお金を盗んでいた」と告白したが、罪から逃れるために、こう懇願したという。
「僕の借金を肩代わりしたことにしておいてくれないか?」
水原容疑者は大谷に無断で口座から違法賭博で作った借金を送金していたのもかかわらず、大谷の代理人、前日のESPNのインタビュー、そしてクラブハウスでのミーティングで、ずっと「大谷が借金を肩代わりしてくれた」と嘘をついていた。その話と辻褄が合うように大谷にも「嘘の供述をしてくれ」と、口裏合わせを懇願したのだ。
この時点で水原容疑者がいくら盗んだかという数字を大谷に明かしたかどうかは判明していないが、4年間にわたってずっと信頼してくれていた大谷を裏切り続け、大谷になりすまして銀行に電話をかけて銀行員を騙してまで、口座から1600万ドル(約24億5000万円)以上のお金を盗んでおきながら、さらに口裏合わせの嘘供述を懇願するなど言語道断だろう。
大谷は、その申し出を拒否し、代理人のネズ・バレロ氏を会議室に呼んだ。その後、バレロ氏は、信頼できる別の通訳を呼び、この危機的状況に対応するために英国王室のアンドリュー王子の裁判を担当したことで知られるロサンゼルスの弁護士(バーク・ブレトラー法律事務所)、俳優ジョニー・デップの離婚訴訟などを担当した危機管理や広報の専門家である弁護士のマシュー・ヒルツィク氏に連絡をとった。そして、その協議には、水原氏の妻も出席したという。水原氏の妻は遠征に同行。韓国のチームとの練習試合から観客席で大谷の新妻である真美子さんと共に応援していた。

 大谷は会見でこの間の状況をこう語っていた。
「その後、試合後、ホテルに戻って初めて一平さんと話をして彼に巨額の借金があることをその時知りました。彼はその時、私の口座に勝手にアクセスしてブックメーカーに送金していたことを僕に伝えました。僕は、やっぱりおかしい、これはおかしいなと思って、代理人と話したいということで、そこで代理人を呼んで話しました。話が終わって、これを聞いて僕の代理人も彼に嘘をつかれていたことを初めて知ってドジャースの皆さんと弁護士の人たちに連絡をしました。ドジャースのみなさんも、代理人の人たちも、自分たちも嘘をつかれていたということを初めて知りました。そして僕の弁護士たちは、これは窃盗と詐欺のことなので、警察の当局に引き渡すという報告を、その時にしました」
この協議が終了後、弁護士事務所が「最近のメディアの問い合わせに対応する過程で、翔平氏が大規模な窃盗の被害にあっていることが判明し、当局に問題を引き渡している」との声明を発表。ドジャースもただちに水原氏を解雇した。
水原容疑者はチームのチャーター機とは別の便ですぐにロサンゼルスに戻ったが、米国土安全保障省の職員が待ち受けていた。水原容疑者は尋問には応じなかったが、捜査に重要な情報があるスマートフォンの提出を求められた。水原容疑者はさすがに観念したのか、取り調べに協力する同意書にサインをしスマートフォンを提出したという。11日に訴追が発表された際の訴状では、水原氏と違法なブックメーカーとの生々しいやりとりの一部が明かされているが、それらは、このスマートフォンの捜査から出てきたもの。
また日本語をネイティブに話すことができる特別捜査間が、2020年から2024年までの大谷と水原容疑者が交わした9700件に及ぶテキストメッセージのすべてチェック。スポーツ賭博に関するやりとりが一切なく、大谷がスポーツ賭博にまったく関与していなかったという潔白が証明された。
水原容疑者は12日に法執行機関に出頭して身柄を拘束され、ロサンゼルス連邦地裁に出廷し、パスポートの押収、大谷との接触禁止、スポーツ賭博などのギャンブル禁止、大谷との接触禁止、ギャンブル依存症の更生プログラムの受講などの数多くの条件を付けられて保釈を認められた。保釈金は2万5000ドル(約380万円)に設定されたが、支払いが困難のため、署名保証金制度を使い、これらの条件に違反した場合に2万5000ドル(約380万円)を支払うという実質“ゼロ円”で保釈された。

 代理人弁護士マイケル・フリードマン氏は「(水原氏は)大谷氏、ドジャース、メジャーリーグ、そして家族に謝罪したいと願っています」との声明を発表した。銀行詐欺罪は最大で禁錮30年、罰金100万ドル(約1億5300万円)の重罪だが、検察側と司法取引を交渉中だという。罪状認否は5月9日(日本時間10日)に行われる予定だ。