長時間のデスクワークをしている場合、身体の不調を感じることも多いのでは? その代表的な症状といえば腰痛。慢性的な腰痛に悩んでいる人も少なくないだろう。仕事のパフォーマンスはもちろん、これではせっかくの休日も楽しめないはず……。
今回は多くの大人やビジネスマンが抱える腰痛の原因や日常に取り入れられる腰痛の改善方法を解説していく。
【腰の構造とは】
腰は私たちのカラダで非常に重要な役割を果たしている。腰椎は、上半身と下半身をつなぐ中心的な部分であり、脊椎の一部である。成人の脊椎は、上から頚椎、胸椎、そして腰椎と続くが、腰椎は5つの椎骨から成り立ち、その下には仙骨がある。
腰椎は椎体と呼ばれる主要な部分と、横突起や上下関節突起があり、これらが椎間板と靭帯によって連結されている。椎間板は、椎骨同士が直接ぶつからないようにクッションの役割を果たし、衝撃を吸収する。また、腰椎を取り巻く筋肉群は、カラダを支えたり動かしたりする際に重要な役割を担っている。

特に重要な筋肉には、腹筋群や脊柱起立筋、大殿筋があり、これらは腰椎を支え、バランスを取りながら自然なS字カーブを保っている。筋肉のバランスが崩れたり、筋力が衰えたりすると、腰痛が生じることがある。
このように、腰の構造は複雑で、多くの部分が連携して機能している。腰痛を防ぐためには、これらの筋肉を適切に鍛え、バランス良く保つことが大切といえる。
   

【腰痛の種類と症状】
腰痛は一般的に『特異的腰痛』と『非特異的腰痛』の2種類に分けられる。
特異的腰痛
特異的腰痛とは、画像検査や診察により痛みの原因が特定できる腰痛のこと。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、脊椎分離症・脊椎すべり症などが挙げられる。
非特異的腰痛
一方の非特異的腰痛は原因がはっきりしない腰痛で、検査をしても痛みの原因となる異常が見つからない場合を指す。長時間のデスクワークによって発症する不調や突然腰に激痛が走るいわゆる“ぎっくり腰”も原因の特定が難しく、非特異性腰痛に該当する。
   

【腰痛の原因とは?】
椎間板ヘルニアなど神経の障害によるもの
椎間板ヘルニアや腰椎圧迫骨折、脊柱管狭窄症などを発症することで腰痛が起こる。椎間板ヘルニアは、椎間板が変性や断裂を起こし、脊髄神経根を圧迫することで痛みが生じる。脊柱管狭窄症は、椎骨や椎間板の変性により脊柱管が狭くなり、神経を圧迫して痛む。
悪い姿勢の影響
長時間座るなど同じ姿勢を日々続けることで、血流が悪くなるとともに筋肉が固くこわばって腰痛が起こる。また、固くなった筋肉が血管を圧迫して血行が悪くなってしまい、腰痛が悪化するというように、負のスパイラルに入りやすい。デスクワークが多いビジネスマンや長距離輸送のドライバーに多いといわれる。
運動不足による筋力の減少
運動不足による腰の周囲の筋肉の衰えと柔軟性の低下も影響する。筋力の衰えにより、背骨を直立させる力が弱まると、背骨や腰椎へのストレスが増大し、その蓄積によって痛みが生じる。さらに、筋肉が硬化すると血流が悪くなり、痛みを引き起こす物質が放出され、結果として腰痛が起こる。
病気によるもの
神経のほか尿路結石など泌尿器の病気、胆のうや十二指腸、膵臓など消化器の病気や血管の病気、子宮内膜症など婦人科の病気などが原因で起こることがある。特に内臓の病気が原因になっている場合は、早めに見つけて治療する必要がある。
心理的要因
人間関係や仕事への満足度の低下など、職場でのメンタルヘルスと腰痛の関連性も指摘されている。心理的なストレスがカラダに影響を及ぼし、腰の筋肉の血行不良や緊張を引き起こすことで常態化すると痛みを伴うことがある。また、ストレスが脳機能に影響を与え、痛みを感じるシステムの不調により痛みが引き起こされることもある。
   

【腰痛の治し方】
筋トレ・ストレッチ
腹直筋のトレーニングで腰椎が本来もっているS字カーブをキープすることや、腸腰筋のストレッチなどで股関節周りの柔軟性を高めて腰周辺の筋肉の血流を促すことが推奨される。また、腰椎を安定させるためには、大腿四頭筋やハムストリングスなどの下半身の筋肉も重要となる。
生活習慣を見直す
日常的に適度な運動を取り入れ、過度な体重の増加に注意する。また、自身にあったストレス解消法を見つけ、睡眠時間も充分に確保することが大切だ。
病院を受診する
医師の指導のもとで薬物療法を用いることもある。薬物療法とは、非ステロイド系の、炎症を抑える鎮痛剤や湿布薬、血液循環を促進する薬、筋肉の緊張を和らげる薬、ビタミン剤などが処方される。痛みが強い場合は、無理をせずまずは整形外科を受診することが推奨される。
【腰痛を予防、緩和するストレッチや筋トレ】
腹直筋のトレーニング(クランチ)
1.仰向けになり、膝を立てて足を床につける
2.両手を頭の後ろに置いて、手を組む
3.腹部の筋肉を使って、ゆっくりと上体を持ち上げる
4.お腹に力を入れながら、元の位置に静かに戻る

   

腹直筋のトレーニング(プランク)
1.両腕の前腕と両足を使ってカラダを支えながら、60秒間キープする
2.休憩を挟みつつ、3セット程度実施

   

腸腰筋のストレッチ
1.脚を前後に広げて、後ろの脚の膝を地面につける
2.両手を前の足の膝の上に置き、上体を前方に滑らせるようにして少しずつ伸ばす
3.ゆっくりと初めの姿勢に戻る
4.反対の脚でも同じ動作を繰り返す

   

腰方形筋ストレッチ
1.四つん這いになる
2.息を吐きつつ、背中をゆっくりとアーチ状にする
3.初めの四つん這いの位置に戻す
4.深く息を吸いながら、背中を下げてお尻を高く持ち上げる
5.2〜4の動作を5セット実行する

   

大腿四頭筋のストレッチ
1.横になり、横向きの姿勢で足首を保持した状態で、上の足を後ろに引く
2.下の足は腹部の近くに持っていき固定、伸ばさないよう注意する
3.カラダが開かないように意識する
4.上の足の前面が伸びている感覚を20秒間キープする
5.5回実施して1セットとし、1日に3セットを目標にする

   

【腰痛ベルト(コルセット)とは?】
腰痛ベルト(コルセット)とは、腰にかかる負担を軽減し、腰をサポートするためのアイテムのこと。腰の負担を減少することで腰痛を軽減できる。

腰痛ベルト(コルセット)を巻くメリット
可動性を制限することで腰痛を抑えられる。また、腹圧を高めて体幹を固めたり、背骨を安定させるサポートをすることができる。良い姿勢をキープしやすくもなる為腰痛の予防ができる
ただし、腰痛ベルトはあくまで一時的に使用すべきもので、腰痛の根本的な原因を取り除くものではない。そのため、腰痛がひどいときはベルトを着用して無理をしないようにし、痛みが軽くなってきたらベルトをしないで徐々にカラダを動かしていくことが推奨される。
腰痛ベルトの選び方
腰痛ベルトの選び方は、腰の痛みの程度や症状、使うシーンによって異なる。さまざまなサイズ、素材の腰痛ベルトが市販されているので、自分に合っているものを選ぶことが重要。たとえば、仕事中も使用する場合は、目が粗いメッシュ素材のものを選ぶと良いとされる。腰痛が長期化したり、手や足に痺れが生じる場合はお近くの整形外科を受診していただきたい。
腰痛についてのまとめ
今回はデスクワークなどで長時間同じ姿勢を取ることが多いビジネスマン向けに腰痛の治し方を解説した。カラダの不調を取り除くことで、仕事のパフォーマンス向上にもつながるはず。日常の仕事や生活はもちろん休日もしっかりと楽しめるカラダづくりを意識すると良いだろう。

【監修者:吉田怜司】

品川区を拠点に活動するパーソナルトレーナー。トレーナー歴10年。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程修了。修士(スポーツ健康科学)。資格/NSCA CSCS( 認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
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取材・文=(株)ラクティブ