運転試験で据え付けられる液化水素ポンプ(提供写真)

 世界的ポンプメーカーの酉島製作所(大阪府)は、京都大と、大流量の液化水素ポンプを開発し、運転試験に成功した。液化水素の効率的な大量運搬に役立ち、脱炭素や水素社会の実現への一歩になりそうだ。

 カーボンニュートラルに向けては、燃焼時に二酸化炭素が発生しない水素の活用が期待されるが、これまで液化水素を大量に移送できるポンプはなかったという。そこで同製作所は、マイナス253度まで冷却して液化した水素を、ガス化しないように移送するための大流量ポンプを開発した。

 開発したのは、構造がシンプルで1台で大量輸送が可能な「ターボ式(遠心型)」と呼ばれるポンプ。液化水素は密度が小さいため、より高速回転させることで圧力を高め、発生する振動も長年培ったポンプ設計技術を駆使して抑制し、水素ステーションなどで実用化されているタイプの10倍以上の流量を吐き出すことが可能という。

 モーターの発熱によるガス化の問題も、京都大で研究開発された超電導モーターを採用し、極低温の液化水素に浸して作動させる工夫でクリアした。

 同社は11日のオンライン記者会見で、3月に運転試験に成功し、液化水素用の遠心ポンプとしては流量や圧力で世界最高を達成したと報告した。原田耕太郎CEOは「水素をつくる、運ぶ、使うといった全過程で必要になるポンプ。水素社会の実現に貢献でき、日本のために開発をさらに進めていく」と話した。

 嬉野市塩田町出身の故・原田龍平氏が育てた同社は2023年3月期の売上高647億円。(北島郁男)