田植えの時期、農休みに食べられるおやつが各地にあります。岐阜県の西濃地域で食べられるのは「みょうがぼち」。「もち」ではなく「ぼち」という名前が、かわいらしい響きですね。ミョウガの葉やそら豆のヒミツ、知っていますか? イラストを拡大して、じっくり見てください〜。

昔、田植えは今よりも遅い時期に行われていて、かつ手で植えていたため、6月に始めて7月半ばまでかかっていました。

そんな田植えの合間や、田植えが完了した後の農休みに食べられていたおやつが「みょうがぼち」です。

現在も西濃地域やその近隣の和菓子店で、6月頃〜9月頃に出会えるんです。

”ぼち”とは?

小麦粉を練って蒸したものを、このあたりでは“ぼち”というそう。形が餅に似ているから“もち”→“ぼち”なのかも?

農閑期となる6月頃がちょうど小麦の収穫時期なので、小麦を用いたおやつとして作られたのだとか。

なぜ、ミョウガの葉?

ミョウガの葉には、殺菌効果や防腐効果があるので、田植え時期の初夏〜夏の暑さでも“ぼち”が悪くならないように使われていました。

昔はこのあたりのどの家の庭や畑にも、ミョウガが生えていたそう。

沖縄で、同じように殺菌&防腐用に使われる月桃(げっとう)は、ミョウガと同じショウガ科なので、葉もよく似てる。月桃の葉よりは、やんわりした香り♪

「ミョウガの葉ごと蒸すことで、“ぼち”にミョウガの葉の香りがほんのり付くのがいいのよ」と、某和菓子店の女将。

作る人によっては、小麦粉に米粉を混ぜて作る場合も。通常のお餅のように伸びはしないけれど、クセになるもちもちさ。
作る人によっては、小麦粉に米粉を混ぜて作る場合も。通常のお餅のように伸びはしないけれど、クセになるもちもちさ。

あんは、そら豆あん!?

昔、このあたりの田んぼの畔(あぜ)には、そら豆を植えていたそう。そら豆の旬とミョウガの葉の旬が同時期なので、そら豆あんが使われるように。そら豆の香りは、全体的に控えめ。

そら豆あんは店によって、こしあんタイプや粒ありタイプなど、いろいろ!

そら豆や大豆などのマメ科の食物は、大気の窒素を植物に供給する働きをする根粒菌(こんりゅうきん)をもっているので、昔は畔にマメ科のものを植えるコトが多かったのです。

暑い夏にはこんな食べ方も!

とある和菓子店で、一度蒸してから冷蔵保存されていたモノを買って、そのまま食べてみたら……。

うまッ。暑い夏には、この冷えたみょうがぼちがすんごく染みる♡

※本来は温め直して食べる

取材・文・イラスト・写真=松鳥むう

松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。