農作物などに被害を及ぼすカメムシの増加が今年、懸念されている。昨年に大量発生した個体が暖冬で「越冬」した可能性があるためだ。カメムシの活動は夏以降に活発化し、島根県は状況を見て注意喚起する構え。農産物の生産者も対応に気をもむ。

 県農業技術センター(出雲市芦渡町)によると、出雲市内1カ所で昨年行った調査では、家の中でもよく見かける「クサギカメムシ」を966匹捕獲。10年間の平均570・7匹を大きく上回った。

 別の捕獲調査でも、特に果実を好む「チャバネアオカメムシ」の個体数が昨年は1962匹で、10年平均の1774・8匹を超えた。昨年は光沢のある緑色の体が特徴の「ツヤアオカメムシ」が全国的に大量発生した年でもあり、県内でも柿などに被害が出た。

 県内では今年、まだ目立って個体数が増えている兆候はないが、同センター病虫科の沢村信生科長は「4月になって『よく見かける』という声が入る。越冬した個体数は多い」と見立てる。本来は冬の気温低下や、積雪で個体数が一定程度減るものの暖冬が暗い影を落とす。

 沢村科長が注目するのが花粉量だ。カメムシはスギやヒノキの球果を好物にするが、今年の花粉飛散量は平年より少なめで、球果の量も少ないとみられるという。カメムシが餌不足から果実を求め「早めに被害が及ぶことも考えられる」と指摘。発生状況を見て農家に適宜情報を提供する。

 カメムシはストロー状の口で果実を刺して水分を吸い出す。刺された部分の細胞は死に、成長が止まったり、へこんだりし、最悪の場合は出荷できなくなる。

 農業生産者は厄介者に気をもむ。出雲市平田地区内の約11ヘクタールで西条柿を育て、昨年は約100トンを出荷した「柿壺」(出雲市野石谷町)の小松正嗣代表(42)は「多い予報がある年でも、被害はあまりなかったりする。こればかりは自然との闘い」と話す。その上で秋の出荷シーズンを念頭に「薬剤散布は極力避けたいが、飛んできてしまうと正直対応は難しい。少しでも被害は少ない方がいいのだが」と願う。