「コブラの笛を吹いているおじさんの横で逆立ち してたら、けっこうな投げ銭をもらいました」と語る武井壮
「コブラの笛を吹いているおじさんの横で逆立ち してたら、けっこうな投げ銭をもらいました」と語る武井壮

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。今回から、「百獣の王」武井壮さんが対談相手です。1回目は武井さんが、いつの間にかタイの映画に出演していたことについて。どのような経緯でこうなったのか。さらに今後の予定なども聞いています。

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ひろゆき(以下、ひろ) 今号からは、武井壮さんをお迎えしてお送りします。

武井壮(以下、武井) よろしくお願いします。ひろゆきさんとゆっくり話をするのは数年ぶり?

ひろ ですね。SNSではちょこちょこ話はしてますけど。

武井 SNSは、おふざけしているだけだから(笑)。

ひろ で、しばらく会わないうちに、武井さんは俳優として活躍の場を広げていて、タイのホラーアクション映画『TA BONG PLUM』(2024年11月公開予定)に出演されてるらしいですね。てか、前にもインド映画に出てませんでしたっけ?

武井 『ミルカ』(13年公開)という作品ですね。インドのアカデミー賞14部門を独占した大ヒット映画です。僕、日本だけじゃなく世界中のエンターテインメント作品に出たいという思いがずっとあって、去年くらいからいろいろ模索していたんですよ。

ひろ 世界進出する場合、アメリカの作品を足がかりにするパターンが多いじゃないですか。なんでまたタイに?

武井 アメリカも考えたけど、やっぱり近いアジアから攻めようと。で、昨年、タイでゴルフのシニアツアーに参加する予定があったので、そのときにタイの映像コーディネーターやキャスティングの方々に「日本人役が必要なときがあったら声をかけてください」って種まきをしてたんです。そうしたら、その後、何本か映画出演が決まりました。

ひろ そういう種まきっていろんな役者さんもやっていますよね。なんで武井さんによく声がかかるんですか?

武井 一番大きいのは事務所のスタイルですかね。僕は個人事務所なので、ほかの俳優さんに比べてかなり自由が利くんです、アジア映画の場合、日本の有名な俳優さんを呼ぶには超大作じゃないと条件が合わないことも多い。でも、僕は、交通費や滞在費などなるべく制作サイドに負担のかからない方法を考えて、有利に交渉できる状態にしています。

ひろ インド映画って米アカデミー賞にノミネートされるくらいだから、それなりに予算もデカいんじゃないですか?

武井 『ミルカ』は費用面というよりも「英語が話せて、インドに2週間滞在できて、トップクラスの陸上の実力がある人」という縛りがあったんですよ。

ひろ その条件に当てはまる日本人俳優って、武井さんくらいしかいないじゃないですか(笑)。

武井 そうなんすよ。日本陸上競技連盟のフェイスブックでも募集してたんですけど、コメント欄に「それは武井壮さんしかいない」って書かれてました(笑)。で、僕が芸能界デビューする直前でスケジュールが空いていたこともあり、インドに2週間行くことにしたんです。でも、そのときはお金が全然なくて、とりあえずマネージャーに1万円借りました。

ひろ え(笑)。いくらインドでもさすがに1万円で2週間は厳しいっすよね?

武井 だからコーディネーターの人に空港に迎えに来てもらったときにマーケットに寄ってもらったんですよ。で、コブラの笛を吹いているおじさんの横で逆立ちしてクネクネしていたら、けっこうな投げ銭をもらいました(笑)。

ひろ 大道芸ですか(笑)。

武井 そうやってお小遣いを稼ぎながら滞在していました(笑)。ちなみに、その映画は超大作だったので、いいホテルを押さえてもらっていて、ごはんも全部サポートされていました。

ひろ タイ映画はどうでした?

武井 タイはインドほど映画文化は進んでないけれど、今、急成長している感じはありますね。VFX(コンピューターによる視覚効果)の技術もすごく高いです。ハリウッド映画の最新作を見ているような感じです。

ひろ 別に日本の映画を断っているわけではないんですよね?

武井 ええ。日本でもNHKの大河ドラマや朝ドラ、民放のドラマもゲストとかでよく出ています。ただ、映画はいい役をもらえばもらうほど長期間のスケジュールを渡さなければいけないんですよ。例えば、まとめて2ヵ月とか。すると、もうすでに仕事の予定が入っていたりして、そのスケジュールが出せないんです。だから、日本の作品にちょこちょこ出ながら、海外に触手を伸ばしていこうという感じです。

ひろ じゃあ、これからも海外での出演がメインになるんですか?

武井 マネージャーにはそういう方向で動いてもらっています。今はベトナムに行ってもらって、現地のキャスティングの方と会ってもらったりしています。

ひろ 今度はベトナムですか。「この国がいい」みたいな指定はあるんですか?

武井 僕は「地球人が誰でも知っている人になりたい」と思っているので、国はどこでもいいんです(笑)。最近はアフリカでも映画が盛んになってきているみたいだから、日本人役とかがあったら出たいなと思っています。

ひろ その感情はどこからやって来るんですか?

武井 今はまだ日本でしか顔と名前を覚えてもらっていないので、海外に行ったときにただの旅行者や消費者になっちゃうのが嫌なんですよ。海外のどこに行っても「あ、武井壮だ!」と気づかれるくらいになりたい。だから、顔と名前を覚えてもらうために、どこの国にでも行こうと思っています。

ひろ だとしたら、今だとネットフリックスの作品に出るのが一番てっとり早いんじゃないすか?

武井 そうなんですけど、大きい作品になればなるほど大手事務所に話が振られやすい。オーディションの話も僕みたいな個人事務所には最初は来ないんです。

ひろ なるほど。実際にアジアから攻めてみて、手応え的にはどうですか?

武井 今は世界的にいろんな人種が出る映画が増えているんです。だから、「日本人が足りないな。誰かいい人いない?」となったときに「この『ソウ・タケイ』って日本人はいろんな国の映画に片っ端から出ているし、簡単にアクセスできる」と思われるような存在になりたい。今は芸能活動を始めた頃のようにイチからのスタートだと思ってやっています。

ひろ タレントとして注目されたときと似てるんすね。

武井 僕が芸能活動を始めたときもこんな感じでした。「この番組のMCはこの人だから、こういうゲストが出る」みたいな縛りが多少はある。でも、そこをくぐり抜けて、本来は誰かが座るはずだった椅子をなんとか自分に持ってくる作業をやらないと出演できない。待っているだけではオファーは来ないんです。だから、自分から積極的に海外に出向いて、「僕はこういう活動をしています」と映像を見てもらって、「僕に合う役があったらいつでも飛んできます!」「飛行機代はマイルを使うのでいりません!」って(笑)。そんな感じでやっていこうと思ってます。

ひろ 数年後には「謎の日本人、ソウ・タケイ」として世界で注目されているかもですね(笑)。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■武井 壮(So TAKEI) 
1973年5月6日生まれ。東京都出身。タレント、元陸上十種競技日本チャンピオン。格闘技、野球、ゴルフなど様々なスポーツの経験を持つ。公式Webサイトは【https://gogotakei.com】、公式Xは【@sosotakei】

構成/加藤純平(ミドルマン) 撮影/五十嵐和博