タピオカミルクティーを飲むという意味の「タピる」、親によってその後の人生が左右されるにも関わらず、子どもは親を選べないという意味の「親ガチャ」など、新しい言葉はどのように生まれるのか。また、()『』【】といった括弧はどう使い分けるのかなど、母語である日本語なのに、知らないことは多い。

■「タピる」、「親ガチャ」 新語が生まれる背景

『日本語の大疑問2』(国立国語研究所編、幻冬舎刊)では、ことばのスペシャリスト集団である国立国語研究所が、叡智を結集して身近ながらも深遠な謎を解説する。

「タピる」や「親ガチャ」といった新語が生まれる背景には複数の要因があると考えられるが、本書では3つの要因を紹介している。

一つ目は、社会的理由。新語の多くは、この社会的理由によって生まれている。これは新しい事物・概念が現れ、それを表す新しい語が必要になった場合に生まれる言葉。

二つ目は、心理的理由。既存の語を言い換えることで、印象を変えたいという心理的な理由によって生まれる新語。たとえば、「美容院」の代わりに「(ヘア)サロン」、「美容師」の代わりに「(ヘア)スタイリスト」と呼ばれるようになったのも、よりおしゃれな印象を与えるためだ。

三つ目は、言語的理由。言語的理由のよくある例は、従来と異なる使われ方が定着した場合が挙げられる。たとえば、「姑息」は「一時しのぎ」という意味だが、昨今では「卑怯」という意味で用いる人が多い。

また、新語には、「既存の言葉を使って作られたもの」の場合と「完全に新しい言葉として作られたもの」がある。「既存の言葉を使って作られたもの」としては「タピる」がそれにあたる。「タピオカミルクティー」の一部である「タピ」と、名詞を動詞化する「る」を組み合わせて作られている。

一方、「完全に新しい言葉として作られたもの」は、ほとんどないと言われている。その中でも「もふもふ」「ぴえん」といった言葉が、この数少ない例に該当する。

新語は人によっては違和感があり、言葉の乱れという見方もある。けれど、当初は物珍しさがあったはずの言葉が、時代を経て何の変哲もない普通の言葉として使われることも少なくない。今、違和感のある新語も、SNSなどで拡散され、数年後には辞書に掲載され、100年後にはごく普通の言葉として使われるようになっているかもしれないのだ。

普段使っている日本語の謎を知り、詳しくなることで、より日本語を面白く感じることができるはずだ。

(T・N/新刊JP編集部)