人生100年時代と言われるようになり、年齢を重ねるにつれて健康面やお金の不安も増えてくる。老いの日々は不機嫌になりがちになってしまうもの。

しかし、「せっかくの人生、機嫌よく生きなければ損」と述べるのが、『老いの上機嫌 90代!笑う門には福来る』(中央公論新社刊)の著者である樋口恵子氏だ。本書は、90代となった樋口恵子氏が、どのように暮らし、どのように衰えていくのかなど、老いの日常を「実況中継」するエッセイだ。

■いつ何を食べたのかをメモする

「昨日は何食べたっけ?」と昨日の食事のメニューを思い出せないことはあるかもしれない。樋口氏はボケ防止と低栄養防止のために、いつ何を食べたかのメモをとるようにしているという。きっかけは娘に命じられたことだった。

樋口氏は80代半ば頃、低栄養と貧血になったことがあるという。自分で料理するのも億劫になり、食も細くなってきたので、一人きりのときはクッキーやパンで済ませることも。その結果、体調を崩してしまう。

娘は心配し、きちんと食べているかどうかを確認するためにも、メモをとるように告げたのだ。メモを書く習慣は、親子関係と健康管理に役立っているという。

■老いても上機嫌に生きる秘訣とは?

若い頃から文化系だった人、運動してこなかった人こそ、元気なうちに趣味活動の一つをゆるやかな体育会系に変えたり、加えたりするといいと本書。

樋口氏も学生時代からずっと余暇活動は読書などの文化系だったが、一念発起し、趣味のお金を個人指導の体育会系リハビリに充てている。かかとの上げ下げエクササイズをしたり、自分なりに奮闘しているという。体は命を載せて運んでくれる器。歳を重ねたら、趣味の一部は体育会系を取り入れることを樋口氏は提案している。

また、老いても上機嫌でいる秘訣は、楽しげに生きること。樋口氏はいつも「ご機嫌に生きなければ損」「楽しげに生きよう」と自分に言い聞かせているそうだ。ただ、高齢になると、怪我や病気、身体の衰えなど、年齢ゆえに悩まされることが増え、落ち込む材料はいくらでもある。

そんなとき、「楽しく」は難しくても、「楽しげに」なら誰でもできる。そのための第一歩として、口角を上げて笑顔をつくること。形から入ることで、案外心持ちも変わるもの。「楽しげに」生きるのは、ご機嫌をつくる知恵なのだ。

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誰もが歳を重ねる。そのとき、「トホホな老後をアハハに変えられる」という樋口氏が実践してきたご機嫌になれるヒントは参考になるはずだ。人生を最後まで面白く、賢く、上機嫌に過ごすためにも、機嫌よく生きることを心がけてみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)