攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第38回は、ジュビロ磐田に新加入した川島永嗣だ。

 日本代表で95キャップを誇り、ワールドカップを4大会経験しているレジェンドは、地元埼玉の高校を卒業後に大宮アルディージャでプロデビュー。名古屋グランパス、川崎フロンターレへの国内移籍を経て、2010年からリールセ(ベルギー)で海外キャリアをスタートさせた。

 以降、スタンダール・リエージュ(ベルギー)、ダンディー・ユナイテッド(スコットランド)、メス(フランス)、ストラスブール(フランス)と転戦。図抜けたセービング力とともに、他に類を見ない語学力を活かし、助っ人守護神としてゴールを守ってきた。

 そして迎えた今冬、かつて日本代表でポジションを争った川口能活氏が、GKコーチを務める磐田に電撃加入。14年ぶりにJリーグの舞台に戻ってきた。すると、直前まで半年間無所属というブランクもありながら、存分に健在ぶりを発揮。2節ではさっそく古巣川崎Fの本拠地でプレーし、初勝利に貢献した。
 
 状態は良さそうだ。41歳の誕生日、インタビューで川島の元を訪れた際にも、非常に充実した表情を浮かべていた。

【インタビューPHOTO】14年ぶりにJ復帰!7か国語を操るレジェンドGK川島永嗣を41歳の誕生日に直撃!

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 コンディションは良いですね。フィジカルコンディションはシーズンが始まった時から全然問題なく良かったんですけど、実戦感覚と、チームメイトとの連係も含めて、時間が経つごとに良くなっていますし、色んな面で順調に来ています。

 ただ、常に結果が求められますし、ジュビロ自体がJ2からJ1に上がったなかで、やはりシーズン最初にどれだけ勝点を積み重ねられるかで、シーズンの残りの戦い方も変わってきます。1試合1試合、自分たちは学ばなければなりませんが、そういうことを言っている余裕もないと思うので。自分の中ではちょっとずつコンディションを上げていこうとか、慣れていこうという感覚はないですし、とにかく1試合1試合、結果を求めてやっています。

 能活さんの存在はやっぱり大きいですね。「どういうところでこだわらなければいけないか」「どういうプレーを目指すのか」というところで、能活さんの経験があってこそ言える言葉はたくさんあるので。言葉を貰う時に「やっぱりそういう目で見ているんだな」と思います。視線が違いますね。

 能活さんと一緒にやらせてもらっていること自体、自分にとっては大きいです。ただ、それだけではなくて、ゴールキーパーコーチとして出てくる言葉が、色んな経験から出てくるものだなと日々感じています。

【記事】「若い選手から学ぶこともある」“40歳のチャレンジャー”川島永嗣は新天地ジュビロに何をもたらすか「ピッチの中では厳しく、外ではみんなと笑顔で」
 久々に身を置くJリーグ。懐かしさとともに、10代、20代の頃と比べて明確な変化を感じているという。

 変化の要因の1つが、映像配信の発達で、海外サッカーがより身近な存在になったことだ。

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 川崎は本当に久々に行きましたね。この前のガンバ戦もそうですけど、どっちかというと、代表の時に戻ってきてプレーするという…埼スタとかもそうですけど、そっちのイメージがだいぶ強くなっていたので、自分のチームでプレーする感覚が懐かしいです。こういう感じだったのかなって思うことが多いですね。

 前と変わった部分で言えば、今のサッカーはすごく整理されているなと思います。多分、僕がまだ日本でプレーしていた頃の方が、選手の判断やゲームスピードも含めて、もう少し遅かったと思います。

 そういう意味では、日本に帰ってきてからは、選手の頭の中も非常に整理されているなと。いくつかのチームだけではなくて、リーグ全体でそういう印象があります。
 
 その要因として、海外と日本がより近くなっているところはあると思います。僕が出始めの頃は、海外サッカーがどういうものなのかを体感しないと何も分からなかったし、そもそも見られるチャンスは今みたいになかったので、触れる機会が少なかったです。

 日本と海外で比べれば、やっぱりサッカーの文化が違うのはありますね。ベルギーに行った時に一番感じたのは、守備面でも待つというよりは、ディフェンスもボールを奪いに行くので、入れ替わられることも多かった部分です。

 例えばシュートブロックのところでも、「どっちかを切る」というのがなかったので。日本だったら当たり前にやってもらえていたことが、当たり前じゃない部分に上手く対応するのが難しかったです。自分が対応しなければいけない状況は違うので、そこはやっぱり難しさが最初はありましたね。

 ピッチ外で一番驚いたのは、時間の流れです。きっちりしていない人が多いので、なかなか生活環境が整いませんでした。練習もみんな結構、ギリギリに出たりしていましたね。

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 ゴールにぐっと近付くバイタルエリア――。攻め込んできた相手にそのエリアに入られた際、それとは逆に、味方が侵入に成功した際、川島はいったいどんな心持ちでいるのか。

 攻守で共通するのは、事前準備の大切さだ。

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 守備時は、バイタルエリアに入る前にどういう風に感じていられるかだと思います。キーパーの場合は、入られたらもうボールに集中するしかないです。入ってくる前にどうその状況を予測できるか。
 
 バイタルエリアに入った時はシュートもありますし、あまり味方との連係を言っている余裕はないタイミングなので。だからどっちかというと、入る前にどう味方に指示しておけるかの方が大きいですね。

 味方の攻撃時は、打てれば「シュート打て!」とか、思いますけど(笑)。どっちかというと、攻撃している時は守備のことを考えていますね。自分たちがボールを奪われた後にどういう展開になるかを考えている方が多いですね。

※後編に続く。次回は3月27日に公開予定です。

取材・構成●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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