[J2第10節]仙台 2−0 山形/4月13日/ユアテックスタジアム仙台

 4月13日にユアテックスタジアム仙台で行なわれた“東北ダービー”仙台対山形。好天に恵まれ、スタジアムは1万7938人の観客でほぼ満席。互いに監督の指示や選手間の声が全く聞こえないほど、両チームのサポーターの声援が響き渡った一戦で、凱歌をあげたのはホームの仙台だった。

 勝利を大きく引き寄せたのは、今季に急成長を見せる左サイドハーフ相良竜之介の先制ゴールだった。

 10分、最後尾からのビルドアップにこだわる山形は、GK後藤雅明から左サイドバックで先発した山田拓巳へ斜めのパスが送られる。山田のトラップが大きくなったところにプレッシャーをかけていた仙台の右サイドバック髙田椋汰が奪い、FW中山仁斗にパス。

 中山は後方からフリーで走り込んでいた相良へパスを送る。「良い位置でボールを受けられて、ボールをもらった瞬間にシュートを打とうと決めていました。相手が遅れて来ていたのをうまく剥がしながら、あとは思い切って打つだけで、良いところに飛んでくれて良かったと思います」と、ペナルティエリアの少し外で左から少し中へ入って右足を振り抜くと、シュートはゴール右下隅へと吸い込まれた。
【動画】相良竜之介の鮮烈ショット!
 相良はキャリアハイとなる今季リーグ戦4点目をゲット。全てゴール中央からやや左斜めの位置から決めていて、1つを除いてペナルティエリア外からのシュートだ。森山佳郎監督は「今シーズンはあそこから振ってゴールというのは、我々の大きな武器になっている」と、相良が得意とするゾーンからまたもゴールを決めたことを喜んだ。

「あそこに入ったら自信があります。まずは足を振らないと入りません」と、相良はこのゾーンに入り込んだらシュートを積極的に狙おうという意識を持っている。
 
 昨季はJ2リーグで18試合に出場し3得点だったが、レギュラー定着とまでいかず。今季に仙台から山形へ移籍したMF氣田亮真とのポジション争いで後塵を拝していた。

「今日、山形にいた氣田選手が昨年同じポジションのレギュラーで、いなくなったことでチャンスを得ているのですが、今年は本当に大きな成長を遂げてくれています」と森山監督も相良の成長には驚くばかりだという。

「あそこ(ゴール斜め左)から抜ききらずシュートというのは、シュート練習も片渕(浩一郎ヘッド)コーチのもと、毎日やってくれているので、その成果です。あのシュートを決めることで、今度は相手が飛び込まずに右足のシュートコースを切ってきたら、切り返しも持っているので、その武器も両方出せます」と、森山監督は持っている武器が豊富で、それを練習でしっかり磨いていることを評価していた。

 さらには「右サイドでしっかりボールキープして良い状態で左サイドにボールが入っているというところで、相良の得意な位置、1on1からシュートあるいは突破というシーンが作れているのかなと感じています」と、右サイドでの作りの部分がうまくいっているからこそ相良が活きていると森山監督は見ている。

 こうして彼の良さを評価している森山監督や片渕ヘッドコーチの指導を受ける相良は、「自信を持ってやらせてもらっているのが一番大きいです。僕だけの力じゃなくて、スタッフのみなさんのスカウティングや、やるべきことをミーティングなどで教えてもらえて、プレーしやすくなっているのは感謝です」とコーチングスタッフへ謝意を示した。
 
 スタッフ陣の指導の成果、結果が出ていることもあって「点を取り始めて間違いなく昨年より自信がありますし、サッカーはメンタルのスポーツなので、メンタルがプレーに出ていると思います」と、メンタルの波がなくなり落ち着いてプレーできているのも大きい。

 そして森山監督が求めるハードワーク、球際に強く行く守備という部分にも順応している。「あれはみんなやっていますし、僕だけじゃなくてチームとしてやれているのが結果につながっているので、続けていきたいですね」とポジティブに捉えている。

 この日はただ球際に強いだけでなく、相手を引きつけたあと、少し下がってプレーのスピードを落としてから横パスを出すなど、ボールを落ち着かせる工夫もあった。

「全部が全部、行くと相手も楽だと思うので、ボールを持つ時間も大事だとハーフタイムを含めてしゃべっていたので、そこがうまく実行できました」と、どこでボールを保持して、どこで強度を高くプレーするかの判断もうまくできている。
 
 この日は昨季ポジション争いをしてきた氣田の前でゴールを決められたのも嬉しかったようで「同じポジションでお互い、いろんなことを話して、仲も良かったです。(氣田)亮真君の前で決められたのは嬉しいですが、山形相手に決められたのが嬉しいです」と語る。

「(氣田は)やっぱりうまいですし、違いを見せていました。逆サイドから良い選手だなと思いながら見ていました」と氣田へのリスペクトは変わらない。山形の氣田は相良のプレーについて「素晴らしいパフォーマンスだったと思いますし、先に決められて自分もゴールを決めたい思いはありましたが、彼が素晴らしかったと思います」と、相良の成長を認めつつ、ゴールを決められず敗れた悔しさをにじませた。6月のNDソフトスタジアム山形の対戦でも2人の対決が注目だ。

 こうした素晴らしいライバルを持ち、急成長を遂げて充実の時を迎えた相良。今季さらなる成長が非常に楽しみだ。

取材・文●小林健志(フリーライター)

【記事】「今までのトップ下像じゃない」中村俊輔が驚嘆した20歳のMFは?「身体も大きいし、両足蹴れて、頭も...」
 
【PHOTO】ゲームを華やかに彩るJクラブ“チアリーダー”を一挙紹介!

【記事】「いいアイデア」JFAの宮本新会長が内田篤人の“提言”に共鳴!「その15分が勝負」