「平常心で戦うことしか考えていませんでした」

 2月24日の開幕節・川崎フロンターレ戦以来、約3か月ぶりの出場となった背番号9の働きが、勝利を引き寄せたと言っても過言ではないだろう。

 5月19日、湘南ベルマーレはJ1第15節でアルビレックス新潟とホームで対戦し、2−1で勝利した。

 湘南は前半、立ち上がりにいくつかのチャンスを作るも、徐々に相手に押し込まれる時間が増え、30分に先制を許した。35分には新潟のDFとGKの連係ミスのこぼれ球を拾ったルキアンが無人のゴールに流し込み、タイスコアとしたが、前半は狙いを出せたとは言い難い内容だった。

 後半に向け、山口智監督がハーフタイムに打った一手は、FWディサロ燦シルヴァーノの投入だった。新潟戦が14試合ぶりの出場となった28歳は阿部浩之に代わってピッチに立つと、2トップの相方であるルキアンと縦に並ぶ形で相手のビルドアップを牽制。

 守備のタスクをこなしながら、52分に自慢の左足で強烈なミドルシュートを放つと、60分には自らのパスが起点となり、ルキアンの決勝ゴールが生まれた。

 攻守で存在感を発揮したディサロは、2点目のシーンをこう振り返る。

「ルキ(ルキアン)に入った時に前向きで良いフォローができた。本当は自分で打ちたかったけど、右足のミドルが決まる感覚がなかったので、相手を引き付けてから左右どちらかを使おうと思っていました。見えてなかったけど、(平岡)大陽の大外から(畑)大雅が上がってくるだろうなと思って、大陽の方を使った結果、ゴールにつながりました。相手のベクトルを折れたという意味でも、良かったのかなと」
【動画】ディサロのパスが起点、ルキアンの決勝弾
 ディサロは今節に至るまで、難しい日々を過ごしていたはずだ。開幕戦での出場時間は90+1分からの数分間に留まり、翌節からベンチ外に。ルキアンや福田翔生(いずれも5ゴール)、鈴木章斗(3ゴール)や阿部(1ゴール)ら、同ポジションのライバルが結果を残すなか、ディサロはどんな想いでピッチを見つめていたのか。

「嬉しいが半分、悔しいが半分です。チームが勝つのは嬉しいけど、同じポジションの選手が活躍するのは歯がゆい部分もある。だからといって、他の選手にどう思うとかはなくて。自分に出番が巡ってきた時に、自分のプレーをするだけです。

 いつ出ても戦える準備をしていました。練習でできたことしか試合で出せないので、取り組んできた結果が、今日ピッチで出せたかなと。身体的にはキツかったですけど、変な緊張はなく、すんなり試合に入れました」

 昨季の湘南のエースで、大学選抜時代に交流のあった大橋祐紀(現・サンフレッチェ広島)に負けたくないと、覚悟を持って臨んだ今季は、思った通りのスタートではなかったかもしれない。ただ、新潟戦でのディサロのプレーは、今後の活躍を予感させるものだった。

 次節のジュビロ磐田戦には、14節の柏レイソル戦でのレッドカードによる出場停止が明ける福田も帰ってくる。FW陣の熾烈な競争が巻き起こるなか、ディサロは出場機会を掴めるか。シーズン後半戦へ向け、湘南のエースナンバーに恥じない活躍に期待したい。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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