上田綺世はひとつキッカケを掴むと、ゴールを量産するタイプなのだろう。欧州初挑戦となった昨シーズン、セルクル・ブルージュ(ベルギー)ではシーズン序盤に苦しみながらも、12節からプレーオフ最終節までの29試合で20ゴールを固め取りし、大量22ゴールを記録してフェイエノールトへの移籍を勝ち取った。
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 日本代表でもそう。代表初ゴールまで13試合もかかったが、この1年間で11ゴールとエースストライカーの名に恥じぬプレーを披露している。

 ここロッテルダムでも30節まで2ゴールとなかなか結果が出なかったが、31節のゴー・アヘッド・イーグルス戦を皮切りに3試合連続ゴールと覚醒。最終節のエクセルシオール戦(4対0)ではノーゴールに終わったが、それでも上田は1アシストを記録。オランダリーグ初年度を5ゴール・2アシストのスタッツで終えた。

 上田の連続ゴールがスタートしたのは、KNVBカップ決勝戦直後のこと。1対0でNECを下したフェイエノールトはカップ王者に輝いたものの、15分間の出場に留まった上田はインパクトを残すことができずに終わり、ピッチの上では優勝の喜びを見せたものの、インタビューゾーンでは浮かない表情をしていた。そのときのやり取りを再現する。

「あくまで僕の仕事の本質は点を取ることなんで、そこですね」

――その悔しさは次のシーズンに取っておいて。

「そうですね。でも取っておく必要もないんですけど」

 その言葉通り、上田はゴー・アヘッド・イーグル戦の後半、2本のシュートを撃ちながらエンジンを温め、3発目のシュートでゴールを射抜いた。そこからの4試合で3ゴール。2アシストの追い込みを見せた。
 
 エクセルシオール戦後、この1年間を振り返った上田は「チームへの貢献はほぼゼロに近いと思っています」と言った。その悔しさは?

「いや、悔しいというのは別にないですね。それは自分の力だし。もう1回、今季の頭に戻ってやり直したとしても、たぶん何かをできたわけでもなく、そこまで結果が変わるわけではないですから。

 ただ、今シーズン、試合に出るために取り組んできたことは、僕にとってすごく価値があったと思います。リーグのレベルというよりも、自分のチームのレベルがぐんと上がったぶん、そこで毎日、刺激をもらえたのは僕にとってすごく良かった。ただ、期待して取ってもらったぶん、もっと結果でチームに貢献したかった思いはもちろんあります。

 そこの不甲斐なさみたいなものを感じますが、自分のパフォーマンスを向上させるために1年間、スタッフにも手伝ってもらいながらいろいろなことをしてきて、ようやく今、自分が成長して、最後に結果をある程度残すことができたので、シーズンの終わり方としては悪くはないのかなと思います」
 初めてのオランダリーグということで、苦労する要素は多々あったはずだが、やはり一番苦労したのはポジション争いを含む、ビッグクラブで自身を表現するということ。

「自分のチームにいかに自身がマッチしていくか(に苦労した)。同じポジションに良い選手(サンティアゴ・ヒメネス)がいた。そこで結果を残して自分のポジションを取るということに苦労した。今まで経験したことのないぐらい、所属するクラブのレベルがグンって上がって、そこで『自分が何を表現しないといけないか』『どこが抜けているか』『どこを伸ばさなきゃいけないか』とやらないといけないことは山ほどあった。自分のパフォーマンスを向上させて、自分のチームの結果に反映するところまで持っていくことが、この1年を通して1番難しかったことです」

 結果を残せなかった時期も、アルネ・スロット監督は上田について「ものすごいポテンシャルを秘めた素晴らしいストライカー」「綺世はアジアカップで自信を満タンにしてフェイエノールトに戻ってくれば良い」「ヒメネスが開幕から絶好調だったのは綺世にとってアンラッキーだった。彼がスタメンでずっと試合に出ていたら、ヒメネスと同じ数のゴールを決めていたことは間違いない」などとコメントしながら擁護していた。その指揮官は来シーズン、ユルゲン・クロップの後を継いでリバプールの監督に就任する。

「プロ、アマを含めて自分が経験してきた監督とはまったく違うサッカーの価値観を持ち、僕も高いクオリティーを求められた。そこに挑戦するっていうのは僕にとってすごく楽しかった。自分を必要として獲得してもらったなか、僕は結果として貢献できず悔しいですけど、僕のサッカー観や自分の選手としての幅の広がりといった面で、自身のキャリアとしてもすごい大きな1年になりました」
 
 シーズン大詰めに掴んだレギュラーの座、蘇ったゴールの嗅覚。その良い手応えを感じながらシーズンオフに入る。来シーズンへの上田の意気込みは?

「今シーズン、1年通してずっと自分が積み上げてきたものを来シーズン表現しなきゃいけない。それはもちろん表現するだけじゃなくて、結果で貢献していかないと、自分のポジションはないし、自分のキャリアにも繋がらなくなるんで、来年また成長しなきゃいけない。自分の中でいろんなことに挑戦しながら、結果を出したい」

取材・文●中田 徹

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