3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

今回は3月23日(土)に中山競馬場で行われる日経賞について下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった11頭を検討対象とし過去10年のデータを使用する。


重要データ:前走GⅡ好走組か前走GⅠ組か

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


日経賞で重要なのは前走クラス別成績だ。OPからの好走馬は0、条件戦からの好走馬もいるが数が少ないので今回は重賞だけに焦点を当てる。前走GⅢだった馬は【0-0-2-20】で好走率、回収率ともにかなり低調。今年は該当馬なし。

GⅡ組は【5-3-5-49】で多数の好走馬を輩出している。ポイントとなるのはどのレースを使っていたかだ。GⅡの中でも多数の好走馬を出しているレースは主に2つ。AJCC【2-2-2-16】と日経新春杯【3-1-0-7】だ(なお、今年は前走日経新春杯の馬はいない)。ホウオウリアリティは中山記念、マテンロウレオは京都記念からの臨戦だから好走データには当てはまらない。

GⅠ組は【4-6-3-14】で高い好走率を誇っている。こちらは前走の着順に関係なく好走馬を出しているので、有馬記念16着からの臨戦となるヒートオンビートも要マークだ。

【前走AJCC、GⅠを使っている出走予定馬】
・アドマイヤハレー
・クロミナンス
・ヒートオンビート
・ボッケリーニ
・マイネルウィルトス


前走の敗因:AJCCのクロミナンス

クロミナンスは前走AJCCで3着。このレースは比較的前にポジションを取った馬で決着した。しかしラップを見ると前後半ほぼフラットな流れで、決して前有利なレースではなかった。ただ馬場状態を見るに内側はかなり悪く、外を通った馬が有利だったと言えるだろう。

クロミナンスは上位入線馬の中では最も内側を通っていた。今回も出走してくるボッケリーニは前走AJCC2着で、大外を走っていた。それを考えればボッケリーニを逆転することは十分可能だ。


血統解説:クロミナンス、ボッケリーニ

・クロミナンス
日本での牝祖は3代母ザスキート。伯父に中京記念勝ちのフラガラッハ(父デュランダル)などがいて重賞級の活力は持ち合わせているファミリーだ。本馬の母イリュミナンス(父マンハッタンカフェ)もクイーンCとクイーンSで3着していてJRA4勝の実績馬だ。芝適性の高いファミリーで、瞬発力というよりは持続性能の高さで勝負するタイプが多い。

本馬は父がロードカナロアだが母系の特徴を上手く引き出していて、短距離馬にならずこの一族らしいタフな中距離馬に仕上がった。

6歳にして準OP勝ち、7歳で重賞挑戦という遅咲きだがキャリアはまだ11戦とフレッシュさがある。本馬は東京コースで切れる脚も使えるが中山でもしぶとく伸びる万能型。怪我などもあって出世が遅れたがここでも楽しみな1頭だ。

クロミナンスの血統表,ⒸSPAIA


・ボッケリーニ
日本での牝祖は7代母レデイチヤツター。約60年日本で繋がってきたファミリーだが勢いが出てきたのはつい最近。宝塚記念、天皇賞(秋)とGⅠを2勝した本馬の全兄ラブリーデイを筆頭に、一昨年の皐月賞馬ジオグリフ、ステイヤーズS3連覇のアルバートなどが出ている。

芝を主戦場とする馬が多いファミリーだが、特筆すべきは豊富なスタミナ。本馬もデビュー戦こそマイルを使われたが、その後は徐々に距離を延ばしていき一昨年の目黒記念で1着、昨年の日経賞で2着など中長距離適性の高さを見せている。

すでに8歳で気性的にはかなり落ち着いており、折り合い面に不安がないことからもGⅡ、GⅢクラスでこの距離であれば安定勢力といえるだろう。距離延長となる今回は前走よりも追走スピードは遅くなるだろうから、ポジションも取りやすく無視できない存在。上積みは望みづらいが上位の1頭であることは間違いない。

ボッケリーニの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではクロミナンスを推奨

今回はクロミナンスを推奨する。7歳と年齢だけ見ればベテランだがキャリアは浅くフレッシュさがある。ようやくコンスタントにレースを使えるようになってきて本格化の兆しも見られる。このカテゴリーでは安定勢力のボッケリーニが難敵だが、前走の着差は0.2秒。直線の進路取りの差を考えれば十分に逆転は可能だ。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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