無敗での二冠達成がかかるジャスティンミラノ

今年も東京優駿(以下、日本ダービー)の週、ダービーウイークがやってきた。やはりこのレースと有馬記念はそこはかとなく気持ちの高鳴りが違う。競馬に関わる全ホースマンの夢舞台の一つだ。

なかでも皐月賞を制したジャスティンミラノは無敗での二冠達成もかかっている。同馬は、2月に東京競馬場で行われた出世レース・共同通信杯の優勝馬でもある。無敗の皐月賞馬で共同通信杯の優勝馬といえば21年のエフフォーリアが記憶に新しい。そこで今回は「過去の共同通信杯優勝馬」にフォーカスしながら、ジャスティンミラノが快挙達成なるか、考えてみたい。


今も忘れぬ2001年の名勝負、ジャングルポケットの豪脚

過去の共同通信杯の優勝馬を見ると、懐かしい名前があった。2001年日本ダービー馬のジャングルポケットだ。

はじまりは2000年の第17回ラジオたんぱ杯3歳Sだった。1番人気が外国産馬クロフネ。2番人気が日本ダービー馬アグネスフライトの全弟アグネスタキオン。3番人気が札幌3歳S覇者のジャングルポケット。このライバル関係は翌年のクラシックでも、大いに競馬ファンを喜ばせてくれた。

ジャングルポケットは次走の共同通信杯で単勝1倍台の支持に応えて快勝、皐月賞ではアグネスタキオン、ダンツフレームに次ぐ3着と好走した。そして迎えた2001年の第68回日本ダービーでは、皐月賞馬アグネスタキオンが左前浅屈腱炎を発症し、出走回避。ジャングルポケットが1番人気に支持された。

レースは逃げ馬テイエムサウスポーが重馬場にもかかわらず、最初の1000mを58秒4というハイペースで後続を離し、ジャングルポケット、クロフネ、ダンツフレームといった人気どころが中団で一塊になるという展開。先にクロフネがマクリ気味に仕掛けたことで、一気にレースが動いた。ジャングルポケットは直線で大外へ持ち出すと、直線半ばで末脚が爆発。迫りくるダンツフレームを寄せ付けず圧勝した。ゴール後しばらくして、日本ダービー初制覇となった角田晃一騎手の左拳が握りしめられたのが印象的だった。

共同通信杯と日本ダービー、両方を制したのは4頭のみ

ゴールドシップやエフフォーリアなどの皐月賞馬、カブラヤオーやミスターシービー、ナリタブライアンなどの日本ダービー馬がいる「共同通信杯組」。クラシックに直結しているイメージはあるが共同通信杯の「優勝馬」に限ると、ジャングルポケットが最後の日本ダービー馬である。また、1986年以降の共同通信杯優勝馬の日本ダービー成績は【4-4-3-21】勝率12.5%、連対率25.0%、複勝率34.4%となっている。

日本ダービーを制した共同通信杯優勝馬,ⒸSPAIA


<日本ダービーを制した共同通信杯優勝馬(1986年以降)>
1986年 ダイナガリバー(皐月賞10着)
1990年 アイネスフウジン(皐月賞2着)
1994年 ナリタブライアン(皐月賞1着)
2001年 ジャングルポケット(皐月賞3着)

ジャスティンミラノが勝てば23年ぶりということになる。これにはいささか驚いた。

共同通信杯優勝馬 春のクラシック成績,ⒸSPAIA


過去10年に目を向けると、以下のような成績になる。なお、括弧内は皐月賞→日本ダービーの着順だ。

<共同通信杯優勝馬 クラシック成績>
2014年 イスラボニータ(1着→2着)
2015年 リアルスティール(2着→4着)
2016年 ディーマジェスティ(1着→3着)
2017年 スワーヴリチャード(6着→2着)
2018年 オウケンムーン(12着→15着)
2019年 ダノンキングリー(3着→2着)
2020年 ダーリントンホール(6着→13着)
2021年 エフフォーリア(1着→2着)
2022年 ダノンベルーガ(4着→4着)
2023年 ファントムシーフ(3着→8着)

過去10年では【0-4-1-5】で、皐月賞馬はイスラボニータ、ディーマジェスティ、エフフォーリアが日本ダービーで2、3着に敗れている。ジャスティンミラノはこの壁を乗り越えられるか、注目が集まる。

キズナ産駒の東京成績が意外な結果に!?

実力面で考えれば戴冠に一番近い存在はジャスティンミラノで揺るがないだろう。昨年11月のデビュー戦で東京芝2000mを経験し、休み明けの共同通信杯では、朝日杯FSの勝ち馬ジャンタルマンタルに完勝した。前走の皐月賞では初の中山コース、コーナー4回の競馬で先団をじっくり見る形の横綱相撲で、坂を上り切ってから一気に加速、並びかけるコスモキュランダを相手に勝負根性を見せて優勝。1分57秒1というコースレコードまで叩き出した。

今回は距離延長での一戦となる。キズナ産駒は距離が延びてこそ力を発揮するイメージだが実際はどうだろうか。

キズナ産駒 芝距離別成績,ⒸSPAIA


芝のレースに限定すると、産駒がデビューした2019年以降で、以下のような成績を残している。

<キズナ産駒 芝距離別成績>
1000〜1300m【37-39-45-412】勝率6.9%/連対率14.3%/複勝率22.7%
1400〜1600m【108-89-88-768】勝率10.3%/連対率18.7%/複勝率27.1%
1700〜2000m【179-153-136-1051】勝率11.8%/連対率21.9%/複勝率30.8%
2100〜2400m【32-37-35-204】勝率10.4%/連対率22.4%/複勝率33.8%
2500m以上【11-14-11-84】勝率9.2%/連対率20.8%/複勝率30.0%

イメージ通り2400m付近で複勝率が最も高くなっている。また、日本ダービーの舞台である東京競馬場は【40-51-42-290】勝率9.5%、連対率21.5%、複勝率31.4%とこちらも安定した成績を残している。では、距離別に見るとどうだろうか。

キズナ産駒 東京競馬場 芝距離別成績,ⒸSPAIA


<キズナ産駒 東京競馬場 芝距離別成績>
1400〜1600m【14-16-15-126】勝率8.2%/連対率17.5%/複勝率26.3%
1700〜2000m【23-26-18-115】勝率12.6%/連対率26.9%/複勝率36.8%
2100〜2400m【3-9-9-45】勝率4.5%/連対率18.2%/複勝率31.8%
2500m以上【0-0-0-4】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%

東京競馬場2100m以上の長距離では、わずか3勝しかあげていない。複勝率が高いのはさすがだが、勝ち星は全て未勝利戦で、最後に勝ったのは2020年6月。ジャスティンミラノがほかの皐月賞組や別路線組に逆転される芽も出てきた。

結論を述べると、上記データしかり共同通信杯優勝馬を阻む「壁」からも、ジャスティンミラノの二冠達成には影がちらつく。必ずしもジャスティンミラノの一強、鉄板とはいえないのかもしれない。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
サクラローレルの馬体の美しさに魅せられ毎週競馬を見るようになる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。一口馬主を趣味とし、楽しさを伝える事にも注力している。競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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