大相撲夏場所は12日に東京・両国国技館で初日を迎える。大関2場所目の琴ノ若改め琴桜(26=佐渡ケ嶽部屋)は、元横綱の祖父のしこ名で臨む初めての場所。初日と重なった母の日に、先代琴桜の長女でおかみの母・真千子さん(51)へ記念の白星を届ける。

 偉大な祖父のしこ名を襲名した琴桜が、新たな歴史をつくる。今日初日の“改名初戦”の相手は西前頭筆頭の大栄翔(30=追手風部屋)。春巡業や場所前の稽古で何度も手合わせしてきた埼玉栄高の先輩相手だが「しっかり自分の相撲を取ることだけ集中すればいい」と無心を強調した。

 初日を翌日に控えたこの日は、朝稽古に参加せず休養と治療を優先。ここまでほぼ休みなく稽古を積んできた疲れを取り、15日間の戦いに備えた。場所前は、出稽古に訪れた大栄翔や小結・大の里らと連日充実の稽古。8日からは適度な休息を挟んで仕上がりは良好のようだ。

 12日は母の日。母方の祖父は第53代横綱・琴桜、父は元関脇・琴ノ若(現・佐渡ケ嶽親方)という相撲一家に生まれ育った一人息子は、子供の頃から母・真千子さんに「毎年感謝の気持ちは伝えていた」。18歳で佐渡ケ嶽部屋に入門すると「母と息子」から「おかみと弟子」へ。「両親ではあるけど、そこ(息子であること)は捨ててやってきた」と関係性は変わったものの、感謝の思いは変わらない。「丈夫な体に産んでもらったので、もう一つ恩返しできるようにしたい」。毎年、部屋の一員として他の弟子たちとともに花やケーキを贈っているが、「琴桜」としての初白星は何よりのプレゼントとなる。

 元横綱の先代琴桜が現役最後の相撲を取った1974年(昭49)夏場所3日目以来、実に50年ぶりに「琴桜」が土俵に上がる。「しこ名が変わったとは思うけど、特に気にしてないです」。気持ちは変わらず、平常心で悲願の初優勝を目指す。