数字で見る大谷翔平の「得手・不得手」球種編

 大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は、ロサンゼルス・エンゼルス時代の2018〜2023年に、計171本のホームランを打っている。右投手から127本(13.3打数/本)と、左投手から44本(17.9打数/本)だ。

 大谷が外野フェンスの向こうまで打ち返した球を、スタットキャストの分類に従って球種ごとに分けてみた。

 右投手が大谷に対して投げて、ホームランとされた127球は、フォーシーム=44球、シンカー(ツーシーム)=22球、チェンジアップ=15球、スライダー=14球、カーブ=11球、カッター=9球、スウィーパー=6球、スプリッター=4球、スラーブとナックル・カーブ=1球ずつとなる。

 左投手の44球は、スライダー=14球、フォーシーム=10球、シンカーとカッター=7球ずつ、カーブ=3球、チェンジアップ=2球、スウィーパー=1球だ。


大谷翔平が得意とする球種は何? photo by Getty Images

 それぞれの球種のホームランの本数は、球数自体の違いにもよる。たとえば、最もホームランが多い右投手のフォーシームは538打数で44本を打っているので、ホームランのペースは12.2打数/本(538÷44)と計算できる。右投手全体の13.3打数/本とそれほど違わない。

 右投手の球種のなかでは、スウィーパーが4.5打数/本、シンカーが7.5打数/本と、ハイペースでホームランを記録している。それぞれ、27球中6球と165球中22球だ。

 ちなみに、大谷が最も多くのホームランを打っている右投手の相手はフランキー・モンタス(現シンシナティ・レッズ)。彼から打ったホームラン4本は、最初の3本がいずれもシンカーだった。球速もほとんど同じ。95.5マイル、95.3マイル、95.9マイル。4本目はスプリッターだが、映像で確認すると、落ちきっていないように見える。

【大谷の打率が下がってしまう球種ワースト3は?】

 右投手からのナックル・カーブは53.0打数/本(53球中1球)とローペース。チェンジアップとスプリッターも、大谷の水準からするとペースは少し鈍く、ホームラン1本当たりの打数は20を超えている。チェンジアップは23.9打数/本(359球中15球)、スプリッターは20.5打数/本(82球中4球)だ。

 一方で左投手の球種は、カッターが10.9打数/本(76球中7球)であるのに対し、スウィーパーは40.0打数/本(40球中1球)。チェンジアップも29.0打数/本(58球中2球)だ。

 対左投手のホームランは、菊池雄星(現トロント・ブルージェイズ)からの3本が最も多い。こちらはすべて球種が違い、カーブ、カッター、スライダーを捉えている。

 また、左投手のナックル・カーブは、打数の最後になった12球ともホームランにはなっていない。10球以上で0本塁打の球種は投手の左右を問わず、ほかにはない。

 今度はホームランの本数とペースではなく、球種ごとの打率で見ていく。まず、比較対象となる「全体の打率」だ。対右投手は.284、対左投手は.253を記録している。ほかのデータと同じく、今シーズンのスタッツは含めていない。

 右投手の球種(打数の最後が10球以上)のうち、打率のベスト3は、シンカーの打率.388(165打数64安打)、ナックル・カーブの打率.321(53打数17安打)、フォーシームの打率.307(538打数165安打)。

 対してワースト3は、スラーブの打率.091(11打数1安打)、スプリッターの打率.195(82打数16安打)、スライダーの打率.246(211打数52安打)。打率.300以上と打率.250未満が3球種ずつだ。

 左投手の球種は、ナックル・カーブの打率.417(12打数5安打)が最も高い。それに次ぐのは、フォーシームの打率.286(189打数54安打)とシンカーの打率.268(142打数38安打)。打率.250未満は2球種。チェンジアップ=打率.172(58打数10安打)、スライダー=打率.222(198打数44安打)となっている。

【投げ損なったスプリッターを高確率でホームラン】

 ホームランのペース(打数/本)と打率のどちらにおいても、大谷が優れた数値を記録しているのは、右投手のシンカーだ。7.5打数/本と打率.388。ホームラン1本当たりの打数が10に満たず、打率も.300以上はこの球種しかない。

 右投手のシンカーとは対照的に、左投手のチェンジアップは29.0打数/本と打率.172。ホームラン1本当たりの打数が25を超え、打率も.200未満はこの球種だけだ。

 なかには、一方の数値が高く、もう一方が低い球種もある。右投手のスプリッターは、ホームランが4.5打数/本だが、打率は.195。映像を見るとモンタスから打ったものを含め、この球種のホームランは4本とも落差が小さい、あるいは落ちていない。大谷は投手が投げ損なったスプリッターをホームランにしている。

 反対に、左投手のナックル・カーブは打率こそ.417と高いものの、5安打のなかにホームランは皆無だ。二塁打と三塁打もなく、すべて単打。しかも、そのうちの2本は内野安打だった。

 もちろん、球種だけでなく、コースやそこに至るまでの配球とカウントなどにより、結果は変わってくる。また同じ球種でも、各投手の球速や曲がり方などは異なる。ただ、こうして見てくると、球種ごとの結果にはかなりの違いがある。

 なお、今シーズンはマウンドに上がらないが、2018年と2020年〜2023年に大谷が投げた各球種の結果は、以下のとおりだ。

対右打者の被打率は、低い順に、スプリッター=被打率.084(131打数11安打)、スウィーパー=被打率.144(396打数57安打)、カーブ=被打率.154(26打数4安打)、シンカー=被打率.226(31打数7安打)、フォーシーム=被打率.276(232打数64安打)、カッター=被打率.280(75打数21安打)。

 対左打者は、スプリッター=被打率.116(199打数23安打)、スライダー=被打率.118(17打数2安打)、スウィーパー=被打率.208(173打数36安打)、カーブ=被打率.208(48打数10安打)、フォーシーム=被打率.267(311打数83安打)、カッター=被打率.300(90打数27安打)だ。

 20打数未満に1本のペースでホームランを打たれているのは、対左打者のカッターと対左打者のスウィーパーだけ。数値は、15.0打数/本(6本)と17.3打数/本(10本)だ。対右打者のスプリッター、対右打者のシンカー、対左打者のスライダーは、ホームランを打たれていない。

 大谷翔平がバッターボックスに立つと、その一挙手一投足に注目が集まる。警戒を強める相手ピッチャーが投げてくるさまざまな球種を、大谷は今シーズン、何本スタンドに放り込むだろうか。

著者:宇根夏樹●取材・文 text by Une Natsuki